研究課題/領域番号 |
17K14278
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石渡 弘治 金沢大学, 数物科学系, 助教 (40754271)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 素粒子論 |
研究実績の概要 |
自然界に存在する4つの基本的相互作用のうち、重力相互作用を除く3つは素粒子標準理論によって統一的に説明されている。素粒子標準理論が基礎とするのがヒッグス機構であり、ヒッグスポテンシャルは素粒子標準理論の中で唯一質量次元を持った項を含んでいる。このヒッグスポテンシャルによって、素粒子標準理論が持つゲージ対称性の一部が自発的に破れ、標準理論粒子に質量を与える。このヒッグス機構は2012年のヒッグス粒子発見により確立された一方、ヒッグスポテンシャルの起源は謎のままである。あるいはさらに根源的な疑問として、(ヒッグスポテンシャルが包含する)質量次元を持つ項の起源は何なのか、について我々は無知である。本研究では、古典的スケール不変性と量子効果によるその自発的破れがこの疑問に答える可能性を追求する。単に標準理論に古典的不変性を課すのみでは現在の地上実験と無矛盾な理論を作ることはできないため、新粒子の導入が不可欠となる。この新粒子の存在により、現在の実験結果と無矛盾、かつ、古典的不変性を持つ新しい理論を構築することが可能となる。しかしながらこうしたヒッグスポテンシャルに関する理論体系は古典的スケール不変性をもつ理論に限らず、超対称理論のよな別の新しい理論との共通点がある。本年度ではその観点に着目し、超対称理論におけるヒッグスポテンシャルの構造解明についての新しい手法を提示した。具体的には、高エネルギー加速器実験においてゲージボソン散乱過程を用いる。ゲージボソンはヒッグス粒子の自由度を含むため、ゲージボソンの散乱過程の一部はヒッグス粒子同士の散乱と同値である。このゲージボソン散乱過程を活用することで、標準理論と超対称理論を選別するためのシグナルは何かを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べた通り、研究はほぼ計画通りに進んでいる。一方、実際の加速器実験における検証のための数値シミュレーションにも着手しており、現在観測に最も適切な物理量は何かを探している。さらに、着目している理論体系が含む暗黒物質候補粒子についての性質についての研究を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得た研究結果を基礎に高エネルギー加速器実験での数値シミュレーションを行い、観測に最も適切な物理量を提案する。しかし現在、この数値シミュレーションには膨大な計算時間がかかることが判明しているため、数値シミュレーションを簡素化するなどの対策を検討している。一方で、こうした新しい素粒子模型に含まれる暗黒物質候補粒子の性質の予言、あるいか現在進行中の観測実験からの制限についての研究を遂行する。特に暗黒物質の間接検出実験での理論研究では、広い周波数領域でのガンマ線を用いた研究がより有効であることがわかり、こうした事実をいかに理論研究に応用するかを探っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
加速器実験の数値シミュレーションに膨大な時間がかかることが判明し、数値シミュレーションに必要な計算機とソフトウェアを再検討するため、次年度分として請求することに決めた。次年度では、加速器実験でのシミュレーションに加え、暗黒物質起源の宇宙線のシミュレーションを計画しており、それらに必要な設備への使用を計画している。
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