研究課題
素粒子標準理論において、真空構造を支配するのはヒッグス粒子である。その真空構造を決める上で重要な、質量次元を持つヒッグス項の起源はいまだ理解されていない。本研究では、標準理論においてはヒッグス粒子によって支配されている真空構造を、標準理論を超えた新しい素粒子理論から理解することを目的の一つにしている。真空構造を加速器実験におけるゲージボソンの縦波成分散乱を利用して探る研究は、シミュレーションにおける技術的な困難がある。その対応策を検討する一方で、暗黒物質直接探索実験を利用した検証法もあることに気が付いた。この方法はヒッグス質量項を持たない古典的スケール不変性を持つ理論の検証に有力である。年々感度が情報する観測実験結果を用いて自身の先行研究の計算をアップデートすると、この理論のかなりのシナリオが既に棄却されていることがわかった。したがって、棄却されずに残った領域を加速器実験と暗黒物質直接探索実験の両面から探る方法を検討している。その一方、近年着目されている擬南部-ゴールドストン粒子が暗黒物質となる新しい理論に対して、暗黒物質直接探索を用いた検証可能性を提示した。この理論は、ヒッグス粒子の他に暗黒物質候補粒子を含む新理論であり、標準理論とは違った真空構造を持つ。この理論では、暗黒物質候補粒子と核子との相互作用がツリーレベルで消えるため、高次量子補正計算が必要となる。その計算を系統的に実行し、探索可能なパラメータ領域を示した。宇宙線を用いた暗黒物質間接探索の理論研究では、暗黒物質を起源とする宇宙線ガンマ線、ニュートリノ、電子、陽電子、陽子、反陽子の銀河外及び銀河内伝搬のシミュレーションを開始し、結果が得られつつある。
2: おおむね順調に進展している
暗黒物質の直接探索実験及び間接探索実験を応用した新しい素粒子模型の探索を進めることができている。
宇宙線を用いた暗黒物質間接検出探索についての研究を中心に取り組む。研究実績の概要で述べたとおり、暗黒物質起源の宇宙線の伝搬シミュレーションの結果は少しずつ得られている。今後は得られた結果の物理的意味を考察し、それらを統合してより包括的な解析を行う予定である。
シミュレーションに必要な環境を整える経費を計上していたが、既存の設備でどの程度シミュレーション可能かを検討した結果、その利用を延期した。次年度以降どの程度の追加設備が必要かを検討し、それに応じて使用する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Physics Letters B
巻: 782 ページ: 367~371
10.1016/j.physletb.2018.05.047
Journal of High Energy Physics
巻: 2018 ページ: 089-1~089-14
10.1007/JHEP12(2018)089