本研究における研究成果は、大きく分けて(1)較正装置および観測手法の開発、(2)解析手法の開発、(3)測定および較正値の評価の3種に区分される。以下にその詳細を記す。 (1) 較正装置の開発: 本研究にて開発機の要件を満たすための開発要素は『機体選定』、『全方位発光光源』、『発光制御回路』『測距装置』、およびドローンにそれら全てを搭載した『飛行型標準光源』となる。 飛行機体は積載量、飛行時間、操作性などを考慮し、DJI 製 S1000+および制御モジュールは同社 A3を採用した。『全方位発光光源』は発光源にUVーLEDを採用し、発光量の角度依存性が小さく、GPS同期の10PPS±500nsを球体光源を開発した。また、較正の重要パラメータである光源位置の計測はRTK-GPSを用いることで相対的に10cm精度で実現した。観測手法はTA実験の宇宙線観測用の望遠鏡を用いた実地試験を毎年行い、測距周波数10Hz と測距分解能 10cm より 1m/s 、測定時の本機と望遠鏡の距離は 300m が最適であると判明した。 『解析手法』は、本機が特化した観測対象を視野方向と設定し、検出素子の不感領域を利用した解析と望遠鏡による受光量重心を利用した解析の2つの手法を開発し、TA実験におけるFDの視野方向の決定精度を従来の10倍ほど向上させた。年度毎の測定などから、本機における測定の系統誤差は±0.03°と見積もられた。 本研究における開発機を用いた測定で宇宙線望遠鏡の幾何光学測定(視野方向)に関して世界最高水準の性能が達せられた。本研究で得られた補正値を宇宙線解析へ導入し、その影響を見積もる解析にも着手しており継続して成果確実である。また、既に収差や感度の解析にも着手しており、別の望遠鏡性能に関しても継続して成果が期待される。
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