静的球対称ブラックホール解に現れる光子球面の概念を動的時空に拡張し、その性質を調べた。光子球面は、近年のブラックホール影の撮影で撮られたものそのものであり、観測により一般相対性理論を検証する際の重要な対象物であると考えられる。一方、ブラックホール時空の理論的研究は、その多くがブラックホール地平線を仮定したり、地平線の性質を調べるものである。そういった研究は理論的には重要ではあるが、地平線はその定義から観測不可能な量であり、観測と結びつけることを考えると地平線に代わる他の対象の研究が必要とされる。光子球面は光でさえもブラックホールのまわりを廻る円軌道をとる非常に強い重力場領域であり、また、地平線の外側にある観測可能な量である。ブラックホールの因果構造や時空構造を探るためには、地平線近くの強重力領域の理解が不可欠である。しかし、光子面は対称性が高い特別な時空で定義されるもので、現実的な動的な時空では、厳密には定義されない。一連の研究では、光子面の概念を動的時空に拡張し、その性質を調べた。また、観測との関連を付けるため、地平線のときに議論されたフープ仮説の考えを、我々の動的な"光子面"の場合に導入して、具体例で動的"光子面"に対するフープ仮説が成り立つことを示した。 また一方、因果構造に関する量子的な研究として、ユニタリ性と繰り込み可能性に関する新たな仮説「SS†=1」と繰り込み可能性が関係するという仮説を提唱した。ユニタリ性と繰り込み可能性に関する以前の仮説は、負ノルム状態を含む高階微分を含む理論がその反例となっていた。本研究では、高階微分を含む理論について、新たな仮説を検証し、高階微分を含む理論でも仮説は正しいことを確認した。
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