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2017 年度 実施状況報告書

高輝度環境下で安定動作する究極の統合トリガー系の開発と超対称性の検証

研究課題

研究課題/領域番号 17K14284
研究機関名古屋大学

研究代表者

中浜 優  名古屋大学, 現象解析研究センター, 准教授 (10786180)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワードトリガー / 超対称性粒子 / エネルギーフロンティア / LHC加速器 / ATLAS実験 / 統合トリガー系 / ミューオントリガー
研究実績の概要

本研究の目的は、(1) LHC高輝度環境下でも安定動作可能な究極の統合トリガー系(メニュー)を実現すること、及び (2) 現行ATLAS実験Run-2で到達可能な超対称性粒子探索に決着をつけることである。研究実績を記述する。
(1) 今年度LHCは設計値を大きく超える瞬間輝度(1.7e34)を達成し、更に秋以降の運転方法変更により、事象重なり合い数(パイルアップ)は60以上まで到達した。本研究では、 物理事象への損失を最小限に抑えながらも高輝度・高パイルアップ環境下で安定動作するように、トリガー選別条件・アルゴリズムをATLAS実験物理プログラムの優先度に基づき最適化し、新たなメニューを責任者として開発した。ビーム運転時は、立ち上げ期の連日連夜の現場での対応に始まり、保守調整法の確立に成功し、年間通じたメニューの安定運転を導いた。更に2018年度で期待される最高瞬間輝度2e34まで対応可能だと実証した。Run-2通じたデータ取得を可能にしたので、極めて重要な成果である。
(2) 第3世代トップスクォーク対を2015-2016年に取得した36/fb 陽子陽子衝突データを用いて直接探索し、論文発表した。有望であるにもかかわらず、実験的に検出困難なので未探索だった、チャージーノと他の超対称性粒子との間の質量差が縮退した位相空間に新たに着目し、ヒグシーノ・ビーノLSPシナリオに対して、それぞれトップスクォーク質量500GeV、850GeV以下まで棄却した。特に、初期放射ジェットが付随した特殊な事象に着目し、レプトン運動量が非常に小さな信号事象に対する感度を大幅に高めた。グルイーノ対も包括的に直接探索し質量2.03TeV以下まで棄却し、主著者として論文発表した。Run-2全データでの結果更新のために、機械学習や複雑な統計処理を用いた新手法を開発中であり、来年度に成果が期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

(1) トリガーの研究においては、最高瞬間輝度2e34まで対応可能な統合トリガー系をすでに開発した。また、Run-3及び高輝度LHCで期待される更なる高輝度環境に対応可能である”マルチスレッディング技術”を駆使した次世代トリガーフレームワークの開発とそのミューオントリガーへの実装も始めた。よって、本研究の目的である究極の統合トリガー系の完成が間近と言える。
(2) 超対称性粒子探索の研究においては、2015-2016年に取得した36/fb 陽子陽子衝突データを用いた直接探索を第3世代トップスクォーク、グルイーノ・スクォークに対してそれぞれ行い、2つの論文として公表した。その際、基本的な解析手法は確立した。さらに、従来想定していなかった超対称性モデル(長寿命のRハドロン)への結果の再解釈をも成功し、棄却結果を公表した。
現在は、2015-2018年に取得予定の140/fb Run-2全データを用いた解析に向けて、更に発見感度が高い解析手法を完成させつつある。例えば、機械学習や複雑な統計処理などである。実データ取得後すぐに結果創出し超対称性を検証する準備は十分に整っている。

以上から、当初の計画以上に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

(1) トリガー研究においては、2018年のLHC最高瞬間輝度は2017年よりも増大し、2e34かそれ以上に到達するので、ますます厳しい運転環境となると予想される。実験現場であるCERNに常駐し、引き続き統合トリガー系の運転・調整を主導する。実ビーム環境下での安定運転を確認した後は、2021年からのRun-3に向けた更なる高輝度化対応の次世代トリガー系の開発に重点を移す。新フレームワークの開発などを学生3名と共に行う。
(2) 超対称性探索の研究においては、2018年までに取得した重心系エネルギー13TeVのRun-2全データを用いて、グルイーノ・スクォークの直接探索を包括的に行う。高統計を有効利用した新解析手法を開発した上で探索結果を主著者として論文にまとめ、年度内に発表する。

次年度使用額が生じた理由

若手研究(B)における独立基盤形成支援(試行)に伴う今年度内の総長裁量経費の受給により、次年度使用額が生じた。使用計画としては、実験現場CERNへの出張旅費及び基盤形成のためのコンピューター購入経費に充てる。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2018 その他

すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] CERN(スイス)

    • 国名
      スイス
    • 外国機関名
      CERN
  • [国際共同研究] LALオルセー/パリ第11大学(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      LALオルセー/パリ第11大学
  • [国際共同研究] エジンバラ大学/マンチェスター大学/グラスゴー大学(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      エジンバラ大学/マンチェスター大学/グラスゴー大学
  • [国際共同研究] アデレード大学(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      アデレード大学
  • [国際共同研究] フライブルグ大学(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      フライブルグ大学
  • [国際共同研究]

    • 他の国数
      2
  • [雑誌論文] Search for squarks and gluinos in final states with jets and missing transverse momentum using 36 fb-1 of sqrt(s) = 13 TeV pp collision data with the ATLAS detector2018

    • 著者名/発表者名
      The ATLAS collaboration
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Search for top-squark pair production in final states with one lepton, jets, and missing transverse momentum using 36 fb-1 of sqrt(s) = 13 TeV pp collision data with the ATLAS detector2018

    • 著者名/発表者名
      The ATLAS collaboration
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Reinterpretation of searches for supersymmetry in models with variable R-parity-violating coupling strength and long-lived R-hadrons2018

    • 著者名/発表者名
      The ATLAS collaboration
    • 雑誌名

      ATLAS CONF NOTE

      巻: 003 ページ: 1-28

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] ATLAS SUSY search using machine learning and sophisticated statistical fit2018

    • 著者名/発表者名
      Yu Nakahama
    • 学会等名
      2018 Joint workshop of TYL/FJPPL and FKPPL
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Searches for direct production of 3rd generation squarks2018

    • 著者名/発表者名
      Yu Nakahama for the ATLAS and CMS Collaborations
    • 学会等名
      The Sixth Annual Conference on Large Hadron Collider Physics
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] LHC-ATLAS実験Run-3に向けたマルチスレッディング実装フレームワークでのハイレベルミューオントリガー開発2018

    • 著者名/発表者名
      林田翔太, 中浜優
    • 学会等名
      日本物理学会

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-22  

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