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2018 年度 実施状況報告書

高輝度環境下で安定動作する究極の統合トリガー系の開発と超対称性の検証

研究課題

研究課題/領域番号 17K14284
研究機関名古屋大学

研究代表者

中浜 優  名古屋大学, 現象解析研究センター, 准教授 (10786180)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードトリガー / 超対称性粒子 / エネルギーフロンティア / LHC加速器 / ATLAS実験 / 統合トリガー系 / ミューオントリガー
研究実績の概要

本研究の目的は、(1) LHC高輝度環境下でも安定動作可能な究極の統合トリガー系(メニュー)を実現すること、及び (2) 現行ATLAS実験Run-2で到達可能な超対称性粒子探索に決着をつけることである。以下、今年度の研究実績を記述する。
(1) トリガー研究においては、2018年のLHC最高瞬間輝度は2017年よりも増大し2e34まで到達したので、ますます厳しい運転環境となった。高い輝度化に伴う事象の重なり合いの増加の影響を軽減するように、いくつかのトリガーアルゴリズムを改良した。また、トリガー用PCファームを20%増強した。これらの弛まない工夫により、2017年度に自身が開発した統合トリガー系から主要なトリガー選別条件を変更せずに、2018年度も引き続きデータ取得を行った。実ビーム環境下での安定運転を確認した。もって、LHC Run-2期間において、ATLAS実験の多彩な物理プログラムを網羅する統合トリガー系を完成できた。
2021年ーRun-3に向けた技術開発として、次世代トリガー系「並列処理マルチスレディング対応の新トリガーフレームワーク」の開発を、ミューオントリガーを例にとり、日本で先駆けて開始した。
(2) 超対称性粒子探索の研究においては、2015-2018年に取得したRun-2全データ140/fbを用いて、グルイーノとスクォークを包括的に探索した。解析技術として、機械学習や複雑な統計処理などをフル活用した更に発見感度が高い解析手法を新たに完成させた。結果を論文投稿準備中である。また、高輝度LHCでの超対称グルーオンの質量到達感度を推定した(2.8TeV/c^2)。これら一連の結果は従来理論的に好まれていた数多くの超対称性模型を棄却し、理論側の模型拡張や実験側の探索戦略双方に対して、今後の新物理研究の進むべき方向性を示すことに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

理由
(1) トリガーの研究においては、当初の計画である「最高瞬間輝度2e34まで対応可能な統合トリガー系の開発・運転」を成功させた。また、Run-3及び高輝度LHCで期待される更なる高輝度環境に対応可能である「マルチスレッディング技術」を駆使した次世代トリガーフレームワークの開発とそのミューオントリガーへの実装も新たに始めた(ミューオントリガー研究の責任者)。
また、本研究テーマ「統合トリガー系(メニュー)」は、トリガー研究と物理解析研究の境界領域に位置し、ハドロンコライダー実験における実験遂行の要である。当初の計画を超えて、今年度はさらにトリガー検出が困難な物理事象(例えば 、長寿命の超対称性粒子やソフトな終状態を持つ事象)を系統的に調べ、Run3用トリガーとしてそれらを網羅するトリガー選別条件の検討を開始した。ATLAS実験の日本グループ内ではあるが、新たな「メニュー研究フォーラム」を立ち上げた。今後も大幅な研究進展が見込まれる。
(2) 超対称性粒子探索の研究においては、2015-2016年に取得した36/fb 陽子陽子衝突データを用いた直接探索結果(第3世代トップスクォーク、グルイーノ・スクォーク)をまとめた査読付き論文を2本出版した(責任著者)。2015-2018年に取得予定の140/fb Run-2全データを用いた解析も論文投稿準備中である(責任著者)。当初の計画を超えて、高輝度LHCでの探索可能性を検討した。このように、この2年間で探索・調査可能なアプローチ複数方面から、超対称性探索を研究した。これら一連の結果は従来理論的に好まれていた数多くの超対称性模型を棄却し、理論側の模型拡張や実験側の探索戦略双方に対して、今後の新物理研究の進むべき方向性を示すことに成功した。

以上から、当初の計画以上に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

2017-2018年度の研究課題であり、研究自体は完了した。
但し、繰越分を利用して、当研究課題の最終成果発表・海外研究者との議論のためのワークショップ(2019年5月開催)に参加して、全て完了する。

次年度使用額が生じた理由

当研究課題の最終成果発表・海外研究者との議論のために参加予定のワークショップが、2019年5月開催になり、その参加費・旅費を確保するため。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)

  • [国際共同研究] CERN(スイス)

    • 国名
      スイス
    • 外国機関名
      CERN
  • [国際共同研究] LALオルセー/パリ第11大学(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      LALオルセー/パリ第11大学
  • [国際共同研究] エジンバラ大学/マンチェスター大学/グラスゴー大学(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      エジンバラ大学/マンチェスター大学/グラスゴー大学
  • [国際共同研究] アデレード大学(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      アデレード大学
  • [国際共同研究] フライブルグ大学(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      フライブルグ大学
  • [国際共同研究]

    • 他の国数
      2
  • [雑誌論文] Search for top-squark pair production in final states with one lepton, jets, and missing transverse momentum using 36 fb-1 of sqrt{s}=13 TeV pp collision data with the ATLAS detector2018

    • 著者名/発表者名
      The ATLAS collaboration
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 06 ページ: 108

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/JHEP06(2018)108

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Search for squarks and gluinos in final states with jets and missing transverse momentum using 36 fb-1 of sqrt{s}=13 TeV pp collision data with the ATLAS detector2018

    • 著者名/発表者名
      The ATLAS collaboration
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 97 ページ: 112001

    • DOI

      https://doi.org/10.1103/PhysRevD.97.112001

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] LHC ATLAS実験 最新の物理結果2018

    • 著者名/発表者名
      中浜 優
    • 雑誌名

      高エネルギーニュース

      巻: 37 ページ: 1

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Trigger Menu in 20172018

    • 著者名/発表者名
      The ATLAS Collaboration
    • 雑誌名

      CERN public note

      巻: ATL-DAQ-PUB-2018-002 ページ: 1

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Status and prospect of physics at LHC2019

    • 著者名/発表者名
      Yu Nakahama
    • 学会等名
      4th KMI International Symposium (KMI 2019)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] LHC-ATLAS実験Run-3に向けた新しいマルチスレッド対応ミューオントリガー系の性能評価2019

    • 著者名/発表者名
      林田翔太, 中浜優 他ATLAS日本トリガーグループ
    • 学会等名
      日本物理学会第74回年次大会
  • [学会発表] LHC-ATLAS実験Run-3に向けた細分化カロリメータ情報を用いたレベル1タウ粒子トリガーの性能評価2019

    • 著者名/発表者名
      江角悠, 中浜優 他ATLAS日本トリガーグループ
    • 学会等名
      日本物理学会第74回年次大会
  • [学会発表] Searches for direct production of 3rd generation squarks2018

    • 著者名/発表者名
      Yu Nakahama for the ATLAS and CMS Collaborations
    • 学会等名
      The Sixth Annual Conference on Large Hadron Collider Physics (LHCP2018)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ATLAS SUSY search using machine learning and sophisticated statistical fit2018

    • 著者名/発表者名
      Yu Nakahama
    • 学会等名
      2018 Joint workshop of TYL/FJPPL and FKPPL
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] LHC-ATLAS実験Run-3に向けたマルチスレッディング技術のミューオントリガーメニューへの実装2018

    • 著者名/発表者名
      林田翔太, 中浜優 他ATLAS日本トリガーグループ
    • 学会等名
      日本物理学会2018年秋季大会
  • [学会発表] LHC-ATLAS実験Run-3に向けた細分化カロリメータ情報を用いたレベル1タウトリガーアルゴリズムの開発2018

    • 著者名/発表者名
      江角悠, 中浜優 他ATLAS日本トリガーグループ
    • 学会等名
      日本物理学会2018年秋季大会
  • [学会発表] 高輝度LHC-ATLAS実験におけるグルイーノとスクォークの探索感度推定2018

    • 著者名/発表者名
      脇田萌, 中浜優 他ATLAS SUSY Upgrade Group
    • 学会等名
      日本物理学会2018年秋季大会

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公開日: 2019-12-27  

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