研究実績の概要 |
本研究は銀河系に広がる、点源に分解できないX線放射(銀河系拡散X線放射)の観測により、銀河系内の宇宙線の起源に迫るものである。
本年度は、銀河宇宙線生成の最有力候補である超新星残骸に焦点を当て、これまでに我々が実証した「中性鉄の特性X線を用いた低エネルギー宇宙線の探査」の手法を用いて、観測研究を行った。このX線成分は淡く微弱なため、これまでで最高の感度を持つX線天文衛星「すざく」のアーカイブデータを使用した。その結果、およそ10天体から中性鉄の特性X線を発見することに成功した(Kes78, W28, W44, Kes 67, Kes 69, G323.7-1.0 など)。さらに、詳細なスペクトル解析の結果、MeV (メガ電子ボルト)の運動エネルギーを持つ宇宙線陽子である可能性が高い。これまでは、超新星残骸からは GeV (ギガ電子ボルト) を超える宇宙線は見つかっていた。本結果は、宇宙線の生成初期における、低エネルギー成分を発見したことである。これは宇宙線の生成機構の解明に重要な情報である。
また、X線天文衛星「ひとみ」が観測した超新星残骸 N132D のデータ解析を行った。「ひとみ」は2016年2月に打ち上げたものの残念ながら1ヶ月で運用を停止した。我々の解析の結果、天体由来の物質がプラズマになり高速で膨張していることを、特性X線のドップラーシフトを元に解明した。得られた結果を、主要著者の1名として投稿論文にまとめた。
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