研究課題/領域番号 |
17K14289
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
信川 正順 奈良教育大学, 理科教育講座, 准教授 (00612582)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | X線天文学 / 銀河系拡散X線 / 高温プラズマ / 超新星残骸 / 過電離 / 低エネルギー宇宙線 |
研究実績の概要 |
本年度は、銀河系中心領域の1000万度の高温ガスの精密調査、および過電離プラズマをもつ超新星残骸 IC443 のX線観測研究を主に行なった。これらの研究対象は、本研究の目的である「銀河系内の拡散X線放射を用いた銀河宇宙線」研究の基礎となるものである。
銀河系中心領域には高温プラズマガスが満ちていることがわかっている。しかしその正体については現在でも活発に議論がされている。その主要なシナリオは、(1) 暗いX線点源の寄せ集め、(2) 真に広がった数千万度の高温ガス、である。広がった高温ガスの中でも比較的温度が低い成分について、その生成起源を解明するために、本年度は「すざく」衛星によるアーカイブデータを用いて、約1度の広範囲の調査を行なった。その結果、低温成分の温度は 1000万度程度であり、元素組成は太陽のものと矛盾がない値であることがわかった。また、そのX線放射強度分布は一様ではなく。塊状に分布しているものもある。点源説の有力候補である coronal active star で説明するためには、無数の天体が必要になり、そのような塊状に偏ることはありえない。また、それらの天体は典型的に元素組成が太陽よりも小さくなることも矛盾する。これらのことから、この高温プラズマは真に広がっていることを明らかにした。またその起源として、銀河中心領域における高エネルギー活動である可能性を指摘した。
また、超新星残骸 IC443 の「すざく」衛星のアーカイブデータを用いて、過電離状態であることを確認し、その生成過程について考察をした。その結果、過電離の有力起源とされた分子雲による冷却では説明できず、外部から電離される必要があることを示した。その電離源として、低エネルギー宇宙線が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は銀河系拡散X線の中から、低エネルギー宇宙線由来の成分を探すことであるので、拡散X線放射の未知の部分を切り分ける必要がある。銀河中心領域において、高温プラズマの切り分けが成功したため、順調に進展していると言える。 また、本研究目的である低エネルギー宇宙線が過電離プラズマの成因になり得ることがわかったことは大きな進展である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、銀河系拡散X線放射の候補の中でも寄与が無視ができない白色矮星連星系のX線観測における性質について調査を行う予定である。それを用いて、低エネルギー宇宙線由来のX線成分を切り分け、宇宙線総量の制限を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画より予算が少なく、物品の購入に別の予算をあてたため。残額は本年度の物品購入および旅費に使用する予定である。
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