研究課題
本研究課題では中性鉄輝線のX線観測を通じて、銀河系における低エネルギー宇宙線の測定を進めてきた。また、これまでに、銀河系内の主要な宇宙線加速源である超新星残骸の観測研究を行い、中性鉄輝線を検出し、それにより低エネルギー宇宙線の存在を明らかにしてきた。さらに、超新星残骸は爆発衝撃波により高温プラズマを生成する。中性鉄輝線が付随する超新星残骸の中に通常では生じない過電離状態の高温プラズマが付随するものが多い。そこで、最終年度は、超新星残骸の加速粒子が付随する高温プラズマに影響を与えることを検証した。X線天文衛星「すざく」のアーカイブデータを用いて、典型的な高温プラズマを付随する超新星残骸(IP SNR) CasA、Tycho、SN1006、CTB109、Cygnus Loop の5天体、過電離プラズマを付随する超新星残骸(RP SNR) W49B、IC443、W28、G359.1-0.5 の4天体を系統的に調査した。これまでに、これらの天体データは解析され論文として報告されているが、著者によって解析方法(使用エネルギー帯域、モデル)が異なる。そのため、我々は同じ条件で解析を行った。取り上げた9天体のデータのほとんどが使用できる 2-4 keV のエネルギー帯域を使用し、Mg、Si、S、Ar の電離状態、及び電子温度に着目した。その結果、IP SNR で経過時間と共に電子温度が下がることから、時間と共にプラズマは冷えていることがわかった。一方で、RP SNR では IP SNR と同程度の電子温度であるにも関わらず、電離温度は高いことがわかった。過電離プラズマの成因として有力視されている、断熱膨張や分子雲への熱伝導による電子冷却では説明ができず、電離促進の必要性を示す。その起源として同じ超新星残骸で生成される宇宙線、特に低エネルギー宇宙線の寄与の可能性を提案した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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