現在の宇宙はビッグバンによって生まれ、その際水素やヘリウムなどの軽い元素のみ生成された。その後、大質量星への進化を経て、超新星爆発によって様々な元素が合成されたと考えられているが、詳細はまだわかっていない。この宇宙初期から起きてきた超新星爆発により生成されたニュートリノ(超新星背景ニュートリノ)は現在も宇宙を漂っており、超新星背景ニュートリノのエネルギースペクトラムは超新星爆発の頻度、つまり星の質量や地球からの距離等に依存する。よって、これを捉えることができれば、星や銀河の形成、宇宙の質量分布等の宇宙誕生から現在までの恒星の進化の歴史の理解が劇的に進む。 世界初の超新星背景ニュートリノの観測を目指すべく、Super-Kamiokande(SK)に硫酸ガドリニウムを導入して中性子同時計測を付加させることで、バックグラウンドを減らして検出効率を上げることを目指したSK-Gdプロジェクトが現在準備中である。 ところで、SKでは超新星背景ニュートリノ以外に、様々なニュートリノの観測も行っている。中でも、太陽から地球に来るニュートリノ(太陽ニュートリノ)を観測するために、SKでは超純水を使用している。よって、SK-Gdにおいても太陽ニュートリノの観測を続けるために、硫酸ガドリニウム中に含まれているウランやトリウムといった放射性不純物を除去する必要がある。本研究課題では、硫酸ガドリニウムに含まれる放射性不純物を高精度で測定する方法を研究し、SKに導入する超高純度硫酸ガドリニウムを決定して、SK-Gdを開始することを目指している。 2017年度は、目標としていた放射性不純物の高精度での測定方法の開発に成功した。この成果はすでに学術論文で公表している。今後は、この方法により決定した硫酸ガドリニウムを試験用タンクに導入して、本番前の試験を行う予定である。
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