本研究の目的は、高精度多体計算による相対論的核物質模型をさまざまな物理現象に適応し、「地上実験」から得られる一様核物質や有限原子核の結果と「天体観測」から得られる中性子星の特性を考慮した上で、両者を統一的に理解することである。 今年度は、研究実施計画に従い、これまでの研究成果を仕上げるとともに対外への発表を予定していたが、COVID-19の影響により参加を予定していた全ての国際会議が中止となったために、国内会議における発表と学術雑誌への投稿を行った。 具体的な研究内容は、「天体観測」から決定される情報(連星中性子星の衝突・合体現象から観測された重力波データを用いた中性子星の潮波変形や中性子星の最大質量)から、前年度までの研究結果に基づく中性子星核物質状態方程式を制限することである。さらに、「天体観測」から制限された核物質状態方程式の解析により、「地上実験」では依然として不明である核物質の様々な物理量(高次の非圧縮率や対称エネルギー)への制限を行うことに成功した。 本研究を通して、相対論的平均場模型を通常の原子核密度付近の物理現象に応用するだけではなく、高密度状態における天体現象に適応したことで、「地上実験」と「天体観測」を統一的に理解することが可能となった。さらに、多体計算の精度を向上したハートレー・フォック計算では、核物質の性質を詳細に説明することが可能であり、その必要性や有用性を示すこととなった。
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