2015年9月、連星ブラックホール合体からの重力波が世界で初めて観測され、2017年のノーベル物理学賞を受賞した。その後も、続々と連星ブラックホールからの重力波が観測されている。それに加えて、まだ数例(候補も含む)ではあるが、連星中性子星合体やブラックホールと中性子星からなる連星合体からの重力波も観測することに成功している。また、日本のKAGRAも2023年にO4観測に4週間参加し、さらにO4b観測が終わる2025年1月までに約10Mpcの観測感度を達成する予定であり(能登半島地震の影響で現在は修理中で、O4b観測への参加が遅れている)、さらなる結果に期待が持たれる。
このような現状を踏まえ、観測される連星中性子星合体からの重力波から多くの物理情報を引き出すことを主眼に様々な角度からの理論的研究を行っている。特に、連星中性子星合体及びそこから放射される重力波の状態方程式依存性に重点を置いて研究を進めている。
ここでは、研究内容・実績の一例を紹介することにする。連星中性子星の合体時、そして合体後に形成される大質量中性子星では、核密度を超える高密度状態が作られる。このような高密度の状況では、クォーク物質が現れると予想されている。そこで、クォーク物質の有無と現れ方(ハロドロン物質から1次相転移でクォーク物質に変化するのか、もしくはハロドロン物質に徐々にクォーク物質が現れるクロスオーバー的な変化か、それともクォーク物質は現れずにハドロン物質のままか)の違いが及ぼす影響に着目し、その詳細を明らかにした。また、その高密度状態の違いが観測される重力波から調べられる可能性も示唆した。
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