研究課題
南極周回気球による宇宙線反粒子探索実験GAPSへ向けて、高性能な大型シリコン検出器の研究を進めた。宇宙線中にわずかに含まれる反粒子、特に低エネルギー反重陽子は暗黒物質のバックグラウンドフリーな探索プローブとして注目されている。GAPSではエキゾチック原子物理を利用した先進的センシング技術の採用により、低エネルギー反粒子の超高感度観測を実現する。この手法の核心的な要素が、エネルギー吸収による宇宙線反粒子捕獲と1次・2次粒子トラッキング、励起エキゾチック原子からの特性X線測定などを担う、新たなシリコン検出器である。厚肉・大口径なシリコン検出器の量産が必要とされる。冷却システムの消費電力を抑えるため、比較的高温な使用環境で十分なエネルギー分解能を達成することも要求される。本研究では、直径10 cm、セグメント数4または8、厚み2.5 mm、そのうち有感層厚みが90%以上、-35度での60 keV X線に対するエネルギー分解能4 keV (FWHM)以下のリチウムドリフト型シリコン検出器を1000個以上量産することを目標として製造法の開発を進めている。当該年度は前年度までに開発したシリコン検出器のエネルギー分解能の測定、信号処理システムも含めた最適化によるデザイン確定、良品率の見積り、量産・評価システムと体制の構築を進めた。放射性同位体及び宇宙線ミューオンを用いた性能評価により、目標とするエネルギー分解能や出力信号の直線性、計数率が得られることを確認した。プレアンプ設計とのトレードオフの検討により、セグメント数を8とし、量産モデルの仕様を確定した。自動測定装置及びソフトウェアなどを開発し、量産・評価体制を構築した。以上により、高性能な厚肉・大口径シリコン検出器の量産が初めて可能となった。
2: おおむね順調に進展している
シリコン検出器の試作品のエネルギー分解能等の測定、良品率の見積り、量産モデルの確定を当初予定通りに進め、本年度中にほぼ達成することができた。量産・評価システムと体制を構築し、GAPS実験へ向けたシリコン検出器の量産を開始している。以上から、区分(2)を選択した。
シリコン検出器評価システムのさらなる効率化を進める。シリコン検出器をアレイ化してGAPSプロトタイプ機を構築し、観測システムの性能を宇宙線ミューオンなどを用いて評価する。それらに基く測定器シミュレーションや、太陽活動が反粒子フラックスに与える影響などを研究し、GAPS本観測へ向けて観測データ解析手法やGAPSが明らかにできる物理などを定量的に検討する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Proceedings of 2018 IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference
巻: - ページ: 1-4
in press