研究課題
光源と測定系の開発: 1) 最短で半値幅4fsの赤外パルス(中心波長1.7μmのサブサイクルパルス)の発生に成功した。ただしこれはプレリミナルな結果であり、安定的に継続して発生するためにはさらに光源の改良が必要なことも明らかとなった。2) 光電場の位相(CEP)測定技術の向上によって、単一サイクル赤外光の位相を高い精度(RMS~300mrad)で観測および安定化できるようになった。3) 超広帯域波長板と形状可変鏡によるパルス圧縮技術を組み合わせることで、単一サイクル円偏光パルスの発生に成功した。この光源を用いた実験から、以下の成果を得た。有機超伝導体における第二高調波発生: これまでの研究から、有機超伝導体κ-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Brに単一サイクルの赤外強電場を照射すると、BEDT-TTF分子間で非線形電荷振動が駆動され、赤外域で強い誘導放出が観測されること、試料が対称心を有するにもかかわらず第二高調波が発生することがわかっていた。本年度は第二高調波発生を詳しく調べた。照射する基本波の位相を精密に制御した実験から、光電場の位相を反映して第二高調波の発生強度が変化することが明らかとなった。この結果は、観測している第二高調波に、光強電場によって駆動される非摂動論的な電子の運動が関与していることを示している。量子スピン液体における光磁気効果: キタエフ型の量子スピン液体を示すα-RuCl3を対象に、単一サイクル円偏光パルスを用いてファラデー回転ポンプ-プローブ実験を行った。無磁場下で高強度の円偏光パルスを照射すると、瞬時に、励起円偏光のヘリシティを反映する大きな偏光回転が観測された。高強度の単一サイクル赤外円偏光を用いた超高速磁気操作の可能性が示されたと言える。
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