研究課題/領域番号 |
17K14324
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
酒巻 真粧子 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (90598880)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | X線吸収分光 / 深さ分解 / 界面 / X線磁気円二色性 / X線磁気円二色性 |
研究実績の概要 |
本研究は、主に二つの計画で構成されている。一つ目は、電界中での界面状態観察を可能とする蛍光収量型深さ分解X線吸収スペクトル(XAS)分析法を発展させ、高分解能蛍光選別機能を付加してS/B比を従来の約30倍向上させることによって、サブnmの深さ分解能を実現することである。二つ目は、本手法を用いて、イオン伝導体を用いた電界印加による磁気変調をその場で観察し、イオン伝導体/強磁性体界面の化学・磁気状態の変化をサブnmの範囲で精密に調べることによって、界面イオン伝導を介した電界誘起磁気変調の機構を明らかにすることである。イオン伝導体を用いた磁性制御は、界面イオン伝導によって誘起された酸化還元反応を利用しており、界面一原子層だけでなく、より遠くまで反応が進行するため、効率的な磁気変調が期待されている。しかし比較的新しい分野であることから、イオン伝導や酸化還元反応、それに伴う磁気変調のプロセスのほとんどが理解されていない。これらのプロセスを理解するためには、電界中で直接界面の化学・磁気状態を観察することが重要である。申請者らはこれまでに、従来の電子収量型深さ分解XAS法を応用し、電界の影響を受けない蛍光収量型深さ分解XAS測定システムの開発を行ってきた。この経験から、より高精細な界面観察が可能な「蛍光選別型」深さ分解XAS分析法の開発し、イオン伝導体/強磁性体界面の化学・磁気状態の変化をサブnmの範囲で精密に調べることによって、界面イオン伝導を介した電界誘起磁気変調の機構を明らかにすることを目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに装置の製作と回折格子の組み込み作業は完了し、Fe箔によるテスト測定を行った。適切に動作することを確認した後、FeCo薄膜に対する蛍光分光深さ分解XAS測定を行った。その結果、5 eVのエネルギー分解能でFeとCoの蛍光を選別し、それぞれのXASスペクトルが得られた。さらにnmオーダーの検出深度を確認し、S/B比は全電子収量型XAS測定の約30倍向上した。従って平成29年度の研究計画は概ね達成された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は電界印加可能な試料ホルダーの作製と、適切なイオン伝導体/強磁性体界面接合の作製・評価を行い、電界中での高精細な界面観察を行うことで、電界による磁気変調の機構解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
カメラ調整用ステージを新規に購入することなく、既存のものを用いたことと、カメラ用フィルタが当初の見積もりよりも安く手に入ったため、約100万円の差額が生じた。この差額分を用い、カメラをより簡便に駆動できる架台を新しく製作する予定である。簡便かつ精密な駆動系の設計が必要なため、本架台の製作に対し約100万円を見積もっている。
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