研究課題
本研究課題では米国NISTとスイスPSIが有する中性子施設との共同研究を柱の一つとしている。平成29年度及び平成30年度では、NISTとPSIと共同開発した試料内の熱勾配が小さい状況下での電流印加が可能な中性子小角散乱実験セッティングを使い、定常/変動電流下で観測される磁気スキルミオン格子の変化の大まかな特徴をつかんだ。最終年度では、これまで測定した定常電流下で観測される磁気スキルミオン格子が塑性変形を起こしながら駆動する「塑性流動」について、論文を執筆するのに必要な最終の追加実験を行った。追加実験では特に、電流中での試料内の様々な方向の熱勾配を定量的に見積もるため、1 mm2 以下に整形した入射中性子を使った。電流印加中では試料内にジュール熱による発熱が発生し、その結果先行研究で観測されている熱勾配と電流による磁気スキルミオン格子駆動が起きる可能性があると考えた。そのため、電流中の試料内の熱勾配を測定試料MnSiの磁気転移温度の試料位置依存性を用いて調べた。実験の結果、試料内ではどの方向にもおおよそ均等な熱勾配(0.03 K/mm 以下)が発生していることが分かった。この熱勾配の大きさは、熱勾配と電流を印加した先行研究で磁気スキルミオン格子の駆動に必要な熱勾配値より1桁以上小さい値であった。以上のことから、我々が電流のみで観測した「塑性流動」が、先行研究とは異なる起源を持つ現象であることを示したと考えた。それらの結果を基にして論文を執筆した。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (2件)
Physical Review Materials
巻: 3 ページ: 104408-1-9
10.1103/PhysRevMaterials.3.104408
Communications Physics
巻: 2 ページ: 79-1-7
10.1038/s42005-019-0175-z
波紋
巻: 29 ページ: 171-175
http://www2.tagen.tohoku.ac.jp/lab/news_press/20190712/
http://five-star.tagen.tohoku.ac.jp/talk/talk_01.html