研究実績の概要 |
本研究では、RPd3S4(R=Ce,Sm,Tb,Dy)の共鳴X線回折(RXS)実験により対象物質の多重極子秩序変数を絞り込み、既存の典型物質との比較から,多重極子自由度やそ の希土類依存性を明確にし,多重極子に関する知見を得ることを目標としている。これまで明らかになった秩序変数はR=Ce,DyのO20, Oxy型の反強的四極子秩序だが、今年度新たにSmPd3S4とTbPd3S4の両方の秩序変数がO20またはO22型の反強的四極子秩序であることが明らかになった。一方で、前年度までSmPd3S4とTbPd3S4の磁気・四極子秩序の周期性が長周期構造をとると思われていたが、実際には低温の秩序相では、高温の常磁性相の立方晶から、三方晶まで結晶の対称性が低下していることが明らかになった。この結晶対称性の低下は、これまで調べてきたCePd3S4とDyPd3S4では生じていない。 一方、磁化測定や比熱測定などのマクロ物性測定では、SmPd3S4の長周期に関連し、構造相転移をもつEuPd3S4の置換物質(Eu1-xYx)Pd3S4の価数状態と秩序状態のY依存性を調べた。Euの価数状態については、Y3+イオンがEu3+とEu2+を5:1の割合でEu3+を優先して置換していくことが判明した。しかし、構造としては立方晶を保持しており明瞭な構造変化は得られなかった。 Pr(Pd,Pt)3S4 に関しては、前年度に引き続き実験装置の不調によりHe3温度領域の測定を進めることができなかった。 また、圧力下のRXS実験の予備実験として調べている圧力セルの印加効率であるが、圧力セルのガスケット厚やキュロット計などを見直したが、3GPa以上の安定した圧力を得ることが難しい。3GPa以下であれば既存の圧力セルでも十分であり、RXS実験への運用は厳しいことがわかった。
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