研究実績の概要 |
SrTiO3(001)面上に作製したSn置換SrIrO3薄膜(SISO, 置換率0%,20%)について、前年度までに、[100]方向に平行なステップと平坦なテラス面持つ、基板処理を行った微斜面基板を用いることで、ドメイン数を抑制できることを見出していた。また同時に、基板処理を行っていない粗い表面に作製した試料に比べ、試料の絶縁性が増すことを見出していた。今年度は、伝導特性の差が基板・界面の寄与によるものか、ドメイン境界の寄与によるものかを見極めるべく、[110]方向に平行なステップと平坦なテラス面で構成される表面上でのSISO薄膜の作製を試みた。期待したのは、ドメイン数が多い膜厚の均一な試料であったが、得られたのは、膜厚にばらつきのある(島状成長した)試料であった。以前に得られた膜では均一な厚さが得られて(層状成長して)おり、ステップの形状が成長様式に影響を与えることが示唆された。モルフォロジーが大きく異なるため、ドメイン境界、基板・界面の伝導への寄与の評価は断念した。 [100]方向に平行なステップを持つ基板上に、置換率を0-20%の間でふったSISO薄膜を作製し、伝導特性、磁気特性を改めて評価した。磁性発現に伴う絶縁性の増加が系統的に確認された。結果をSn置換CaIrO3(CISO)の場合と比較し、どちらも置換により絶縁性が増加するが、SISOでは磁性発現による絶縁性の増大がはっきりと見られるのに対し、CISOの場合はむしろ結晶への乱れの導入によっているという結論を得た。結果を論文で発表した。実験は博士学生の根岸真通氏が担当した。
|