質量を持たないディラック電子の存在などで注目されているトポロジカル絶縁体研究は理論・実験共に着実に進んでいる。一方で、トポロジカル超伝導体は特異な性質や量子コンピューターなどへの応用が期待されており、複数の候補が上がっているがまだ進んでいない。本研究では、複数の候補物質について試料作製及びNMR測定を行い、トポロジカル超伝導体の理解を深めることを目的とする。 今年度は最近発見されたトポロジカル超伝導体候補物質CuxBi2Se3単結晶試料の作製及び物性評価、InxSn1-xTe、PbTaSe2の超伝導対称性研究を行った。 超伝導状態になると、結晶の3回対称とは異なる2回対称が超伝導物性に現れ、スピン三重項超伝導であるCuxBi2Se3では、2回対称が現れる方向が論文によって異なることが問題になっていた。今回新たに複数の試料を作成し物性測定を行った結果、2回対称が現れる方向が試料によって異なることを発見し本質的なものであると裏付けた、本研究結果は日本物理学会第73回年次大会で報告した。この結果については現在論文を投稿中である。 トポロジカル結晶絶縁体SnTeにInをドープすることで超伝導が発現するInxSn1-xTeはトポロジカル超伝導体の候補として注目を集めていたが、超伝導対称性を決定するためにNMR測定を行った結果、通常のフルギャップシングレット超伝導体であるというこを発見しPhysical Review B紙に論文として報告した。 同様にトポロジカル超伝導候補物質であるPbTaSe2の超伝導対称性をNMR法を用いて研究し、超伝導対称性を明らかにした。この結果もPhysical Review B紙に論文として報告した。 また、日本物理学会2017年秋季大会にて本研究に関するシンポジウム招待講演を行った。さらに、物理学科誌2018年2月号にて、本研究に関する解説を発表した。
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