研究課題
Sr2IrO4 は、銅酸化物高温超伝導体の母物質の一つであるLa2CuO4 と類似のK2NiF4 型の結晶構造を持つ。La2CuO4とは、結晶構造の他に電子構造や磁気構造など、複数の類似点を持つことから、Sr2IrO4 にキャリアを20%程度という高濃度でドープすることで高温超伝導体になる可能性があると期待されている。本研究実施者は、未だ報告のない最高電子ドープ量のイリジウム酸化物単結晶Sr1.88La0.12IrO4 の育成に成功した。そこで、本研究では、価電子帯バンドからの光電子の角度分布を2次元的に一度に測定できる世界唯一の2次元表示型光電子分光器と直線偏光放射光を用いて、今まで明らかになっていなかったSr1.88La0.12IrO4 の2次元バンド分散とフェルミ面付近のバンドを構成する原子軌道の解析を行い、ドープによる電子状態の変化を調べることを目的とした。そして、Laのドープ量を増やしたSr2xLaxIrO4 単結晶を育成し、La ドープ量の違いにおける2次元バンド分散の変化や高温超伝導発現に関わるフェルミ面直下のバンドを構成する原子軌道の違いを直接観測により明らかにすることで、ドープによる超伝導体探索の手がかりを得ることを目的とした。本年度は、Laの仕込み濃度20 %、大きさ1 mm×2 mmの単結晶を育成して光電子分光の試料とした。しかし、実験場所の立命館SRセンターの光源に不具合が発生し、2018年11月まで設備メンテナンスで十分な利用ができなかったこと、また、実際に行った実験においても放射光強度が弱く必要な光電子信号量が得られないことが判明したため、本年度は、SPring-8のBL25SUにて光電子ホログラフィーによるドープ原子の周りの原子配列を解明し、ドープ原子の原子配列への影響を調べ、新規超伝導体開発のためのLaドープ原子の役割の解析を行った。
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