研究課題/領域番号 |
17K14348
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研究機関 | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発 |
研究代表者 |
池内 和彦 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 研究員 (90435595)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 磁気励起の測定 / 格子振動測定実験準備 / 試料育成環境整備 |
研究実績の概要 |
本研究では、主に電子注入型銅酸化物高温超伝導体の低エネルギー磁気励起、および、格子振動の詳細な測定から、超伝導ギャップ関数を同定し、ひいては、正孔注入型に対する電子相図の対称性/非対称性を明らかにすることを目的としている。 29年度は、大型中性子施設J-PARCのフェルミチョッパー型分光器BL01 四季で非弾性散乱実験を行い、電子注入型高温超伝導体 (Pr,La)1.88Ce0.12CuO4の磁気励起の詳細な観測に成功した。運動量(横軸)― エネルギー(縦軸)平面上の強度分布にみられる構造は、磁気励起の分散関係を示す。正孔注入型の磁気励起は、磁気 Γ点Kort = 1 r.l.u. 近傍で格子非整合構造を持ち、二本足の分散関係を示している。一方、電子注入型の磁気励起は、磁気 Γ点Ktet = 0.5 r.l.u. 近傍で格子整合構造を持ち、一本足の分散関係を示していることが明瞭に示された。さらに今回、電子注入型について詳細な温度変化も得られており、解析を進めて超伝導状態との関係を明らかにしていく予定である。30年度は、引き続き、電子注入量の変化に対する磁気相関の依存性と格子振動の温度変化を調べ、特に超伝導機構の理解にとって重要な、低エネルギー磁気相関の電子―ホール対称性を明らかにしていく。現段階で国内外の複数の中性子施設での実験時間の確保出来ている。また、これらの実験に用いる単結晶試料合成に必要な種々備品を整備した。引き続き電気炉などの育成環境を整備する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
29年度中に、申請者の所属機関に試料育成環境を整備する予定であったが、必要となる大型マッフル炉の安全審査に、半年間もかかる事態に見舞われた。既に安全審査は通過しており、当該マッフル炉は発注済みである。試料育成環境の整備が遅れた分は、共同研究者からの試料提供で補う。また、実験実施予定の海外原子炉施設が、年明けに稼働予定になったとの連絡もあり、非弾性散乱実験についても予定外の遅れが見込まれるが、平行して他施設への課題申請を行い、遅れを取り戻す。
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今後の研究の推進方策 |
30 年度初旬に実験試料環境の整備を一段落付け、単結晶試料育成を開始する。加えて共同実験師から提供を受ける試料も使いながら、磁気励起、および、格子振動の観測のための非弾性散乱実験を進めていく。現段階で国内外の複数の中性子施設での実験時間の確保出来ている。また、放射光非弾性散乱実験の申請も平行して行う。主軸となる実験は、年度中に終えることを予定している。その後引き続き、結果の解析、発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度中に、申請者の所属機関に試料育成環境を整備する予定であったが、必要となる大型マッフル炉の安全審査に、半年間もかかる事態に見舞われた。マッフル炉は、試料の合成や焼成に使用するためのもので、この整備に引き続いて購入予定の消耗備品も連なって整備が遅れる結果となり、次年度使用額が生じた。既に安全審査は通過しており、当該マッフル炉は発注済みで、6月納入予定である。昨年度の予算執行上の遅れは、その納入を持って解消する。
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