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2017 年度 実施状況報告書

準周期系の超伝導の理論研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K14350
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

酒井 志朗  国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (80506733)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード準結晶 / 超伝導 / フラクタル
研究実績の概要

準周期系で超伝導が発現した場合に、周期系の超伝導体と異なるどのような性質が見えるか、という観点から、2次元ペンローズ格子上の引力ハバード模型の超伝導状態を数値計算によって調べた。これまでの研究で、特に引力が比較的弱い場合に、クーパーペアが空間的に広がった超伝導状態があることが分かっているが、並進対称性のない準周期系では運動量空間が定義されないために、このクーパーペアは通常の運動量空間でのペアとは考えられず、新しい超伝導状態として興味深い研究対象である。そこで、弱相関領域において簡便かつよい近似になると考えられるBogoliubov-de Gennes理論に基づいて、超伝導状態を計算するプログラムコードの開発を行った。それにより、これまでの実空間動的平均場理論で扱えていた4181サイトを超えて、11006サイトまで扱えるようになった。この方法を用いて、超伝導体の基本的な性質である超伝導ギャップと転移温度の比を調べたところ、Bardeen-Cooper-Schrieffer理論から導かれるユニバーサルな値よりも小さいことが分かった。また、ごく最近、準結晶超伝導体が実験的に見つかったことを踏まえ、実験で測定可能な量にどのような特徴が見られるか明らかにするという方針のもと、比熱の計算や電流-電圧特性の計算を行った。更に、準結晶超伝導体が、空間的に非一様な超伝導秩序変数を示すことを踏まえ、磁場下でどのように磁束が侵入するかという問題を考え、その計算を実行するプログラムコードを作成した。また、準周期系と周期系の違いを明らかにする目的で、近似結晶に相当する長周期構造での超伝導状態を計算するプログラムコードも開発した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

上に述べたように、準結晶超伝導体の特徴を明らかにするための様々なプログラムコードの開発を行い、それによる数値計算を実行中であるが、システムサイズ依存性などについて慎重に検討する必要がある。空間的に広がった超伝導状態が最も非自明で興味深い研究対象であるが、広がっているがゆえに、系の境界の影響を受けやすく、準結晶超伝導体としての性質を確立する上では注意が必要である。これまでの研究によって、引力が強くなればクーパーペアがより局在することが分かっているが、引力が強すぎる場合は、格子構造よりも局所的な構造によって超伝導状態が決まってしまい準周期系としての特徴が見えなくなってしまう。従って、計算可能なシステムサイズにおいて、境界の影響を無視できる程度に局在しつつも、準周期構造を反映する程度に空間的に広がった超伝導状態を調べられるように引力の強さを選ぶ必要がある。
これは実際には、空間的に広がった超伝導を示すことがわかっている引力の比較的弱い領域を調べつつ、計算結果がシステムサイズについて十分収束しているか確認し、準周期系超伝導の特徴を抽出するということである。このように慎重な検討を重ねながら研究を遂行しているため、当初の計画よりも若干遅れが出ている。

今後の研究の推進方策

上述のサイズ依存性に注意を払いながら、準結晶超伝導体の基本的性質を明らかにする。
特に、Bardeen-Cooper-Schrieffer理論から導かれるユニバーサルな関係式が成り立つか数値計算によって検証する。また、実験的に測定可能な物理量についての計算を行い、測定量のどの部分に準結晶超伝導体の特徴が現れるか明らかにする。
磁場によって、準結晶超伝導体にどのように磁束が入り、超伝導状態が破壊されるかという問題も興味深く、この点も追究する。
また、準結晶構造のフラクタル性と超伝導秩序変数の空間パターンの関係についても研究を進める。

次年度使用額が生じた理由

計算機の価格は為替相場や製品開発状況によって随時変動するが、今年度はそれを当初予定よりも低い価格で購入できたため。
次年度の旅費や論文出版費用として使用する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)

  • [国際共同研究] パリ南大学/パリ第7大学/サクレー研究所(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      パリ南大学/パリ第7大学/サクレー研究所
  • [国際共同研究] ブルックヘブン国立研究所(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ブルックヘブン国立研究所
  • [国際共同研究] ミナス・ジェライス連邦大学(ブラジル)

    • 国名
      ブラジル
    • 外国機関名
      ミナス・ジェライス連邦大学
  • [雑誌論文] Correlation-Driven Lifshitz Transition at the Emergence of the Pseudogap Phase in the Two-Dimensional Hubbard Model2018

    • 著者名/発表者名
      Braganca Helena、Sakai Shiro、Aguiar M.C.O.、Civelli Marcello
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 120 ページ: 067002-1,6

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.120.067002

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Observation of Bogoliubov Band Hybridization in the Optimally Doped Trilayer Bi2Sr2Ca2Cu3O10+δ2017

    • 著者名/発表者名
      Kunisada So、Adachi Shintaro、Sakai Shiro、Sasaki Nae、Nakayama Mitsuhiro、Akebi Shuntaro、Kuroda Kenta、Sasagawa Takao、Watanabe Takao、Shin Shik、Kondo Takeshi
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 119 ページ: 217001-1,5

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.119.217001

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Vertical temperature boundary of the pseudogap under the superconducting dome in the phase diagram of Bi2Sr2CaCu2O8+δ2017

    • 著者名/発表者名
      Loret B.、Sakai S.、Benhabib S.、Gallais Y.、Cazayous M.、M?asson M. A.、Zhong R. D.、Schneeloch J.、Gu G. D.、Forget A.、Colson D.、Paul I.、Civelli M.、Sacuto A.
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 96 ページ: 094525-1,7

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.96.094525

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Superconductivity on Penrose lattice2017

    • 著者名/発表者名
      Shiro Sakai
    • 学会等名
      Open space between aperiodic order and strong electronic correlations
    • 国際学会
  • [学会発表] Superconductivity on quasiperiodic lattice2017

    • 著者名/発表者名
      Shiro Sakai
    • 学会等名
      the 28th International Conference on Low Temperature Physics
    • 国際学会
  • [学会発表] Theoretical study of quasicrystalline superconductors2017

    • 著者名/発表者名
      Shiro Sakai
    • 学会等名
      CEMS Symposium on Trends in Condensed Matter Physics
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-22  

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