研究課題
本研究の目的は、原子間コヒーレンスを用いて励起状態からの放射レートを増幅する技術を応用し、微弱な高次QED過程(E1三光子遷移、E1×M1二光子遷移)の放射を実現、観測することであった。この技術は、ニュートリノ質量の精密測定や、パリティ対称性の破れの精密測定に応用できるもので、標準理論を越えた物理の構築に手がかりを与える実験の基盤技術となり得る。本研究は、コヒーレント増幅を記述するシミュレーションモデルの構築から始めた。具体的には、E1三光子励起によるコヒーレンス生成と、コヒーレント増幅されるE1×M1二光子放出、コヒーレント反ストークスラマン散乱型E1×M1二光子遷移を同時に記述できるMaxwell-Bloch方程式を導出し、数値シミュレーションコードの開発を行った。実際の実験では、標的準備が比較的容易なキセノン原子気体を用いることにした。基底状態と第一励起状態間にコヒーレンスを生成するのを目標として、波長298nmの光による二光子励起を行った。この遷移はE1×E1二光子遷移は禁制であるので、より高次の二光子遷移となる。励起光源は、非線形光学結晶を用いた波長変換等を利用して開発した。励起された原子数は、ポンププローブ法によって測定した。具体的には、第一励起状態から別の励起準位へ遷移させ、脱励起時に発生する蛍光量を測定し、レート方程式の計算と比較した。コヒーレンス生成のための励起と、励起原子数評価が可能になったことは、高次QED過程の放射の実現、観測に向けた重要な結果である。
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Journal of Physics B: Atomic, Molecular and Optical Physics
巻: 52 ページ: 045401~045401
10.1088/1361-6455/aafbd0