研究実績の概要 |
本研究は、弱強度光格子 BCS-BEC クロスオーバー領域における弱強度光格子中のスピン軌道相 互作用をもつフェルミ原子気体超流動の実現可能生の検証、及び、その性質を解明することを目 的としている。特に、発生する超流動がトポロジカル超流動であるか検証し、トポロジカル超流 動と超伝導の関連性およびその普遍的な性質について解明することを目的にしている。 2022年度は超流動の崩壊機構について詳細に明らかにした。 光格子を超流動臨界速度よりも速く等速運動させることで、超流動の崩壊を誘起させることができる。超流動臨界速度にはクーパー対 の崩壊に起因したものと、超流動が音速を超えたために起こる Landau 不 安定性(集団励起)に起因したものの二つがあり、超流動を担う原子対の性 質を反映し、質的な違いが現れることが期待されていた。本年度はBdG 方程式と般乱雑位相近似による解析を行い、クーパー対の崩壊に起因する超流動臨界速度を BdG 方程式から求め、 また、低エネルギーにおける集団振動については一般乱雑位相近似によ る密度応答関数の計算から求めた。 その結果、BCS-BEC クロスオーバー領域での臨界速度は、実際に実験[D. E. Miller, J. K. Chin, C. A. Stan, Y. Liu, W. Setiawan, C. Sanner, and W. Ketterle, Phys. Rev. A 99 063627 (2009)]によって得られているものとよい一致が見られた。本研究で新たに構築した理論は弱強度光格子2成分 Fermi 原子気体の性質をよく記述できていると考えられる。また、超流動臨界速度の計算により、超流動の崩壊機構を解明することで超流動を担う原子対の性質の解明が行えることが検証できた。
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