研究課題
我たちは「極低温まで冷却された強相関リュードベリ原子集団」と「アト秒精度のコヒーレント制御技術」という2つの独自ツールを用いて強相関系の量子多体問題に取り組んできた。リュードベリ状態の励起光源にピコ秒パルスレーザーを用いるという独自手法によって強相関原子集団を生成し、それが示す量子多体ダイナミクスを観測・制御することに成功している。本研究課題では、この研究成果を数100nmというマクロなサイズに渡って振動運動するリュードベリ電子波束に応用し、強相関系における量子多体効果をより良く理解する計画である。昨年度中に、私たちが開発してきたコヒーレント制御技術が、対称性の破れという重要な課題に応用可能であることが判明した。昨年度に引き続き、この対称性の破れに関する研究を行った。光トラップ中に準備した冷却ルビジウム原子の電子構造の対称性をレーザーパルスの照射によって破った後、アト秒精度で照射時刻を制御した別のレーザーパルスによって破れた対称性を高いコントラストで回復することに成功した。この成果はPhysical Review Letters誌に掲載された。私たちの研究では基底状態とリュードベリ状態の2状態を擬似スピンとして扱う。上述の対称性の破れとその回復という制御技術はスピン操作そのものであり、今後の量子多体問題の研究に有用であることが判明した。しかし、リュードベリ状態のポピュレーションが10%にも満たないという問題があった。本研究の課題である原子間相互作用強度の新奇制御手法の確立において、100%近くまでポピュレーションを上げることが重要である。共同研究者と詳細な検討を行い、これを達成するためのパルス条件を求めた。また、光トラップ中では原子の乱雑分布により相互作用効果が平均化されるため、光格子中でモット絶縁体を実現し規則配列した原子集団を使って量子多体効果を観測する実験を進めた。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 8件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Physical Review Letters
巻: 121 ページ: 173201
10.1103/PhysRevLett.121.173201
Accounts of Chemical Research
巻: 51 ページ: 1174-1184
10.1021/acs.accounts.7b00641
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