研究実績の概要 |
計画に従って断熱型熱量計を用いてメソポーラスシリカ細孔中のトルエン(細孔直径2.6 nm, 3.8 nm, バルクの3種類)について測定した。試料に用いたメソポーラスシリカは自身で合成するか、太陽化学から提供された。ベンゼンと異なる挙動を示していて、特に、170 K付近に細孔の軸方向の濡れに関するガラス転移と推測される熱異常が観測されているのが興味深い。今後、6 nm、8nm程度の比較的大きな細孔と、2 nm程度の小さな細孔でのトルエンの熱容量を測定して細孔に封じたトルエンの挙動を理解しようと考えている。
同様に計画に従って、蒸気圧測定装置の作製を行い、バルクの水の蒸気圧測定によりその性能評価・課題の検討を行った。満足できる測定精度であったが、空気漏れが想定よりも小さいため、より高い測定精度の実現を期待して、圧力計を変更し、クライオスタッドの作成に取り掛かった。当初蒸気圧測定と浸漬熱測定からエントロピー変化を測定することを計画していたが、蒸気圧装置の性能を考慮して、蒸気圧の温度変化からエントロピーを測定することに計画を変更した。
また、断熱型熱量計を用いて、架橋デキストランゲルSephadexに吸収した水(吸収量がゲルとの重量比でh= 0, 0.188, 0.273, 0.500の4種類)の熱容量及びガラス転移挙動を測定した。Sephadexに吸収した水は、シリカ細孔と同程度の小さな穴に閉じ込められているが、基質の運動により、水だけが低温で凝集するためメソポーラスシリカに封じた水と異なる挙動を示した。現在、申請者が行っている研究をより広い対象に拡大していく中で重要な知見を得られると期待される。
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