多くの生命活動のエネルギー源はアデノシン三リン酸(ATP)であり、その加水分解で得られる自由エネルギー差は、熱ゆらぎ(~kBT)の高々20 倍程度である。そのため、このエネルギーを駆動源にする生体分子は、熱ゆらぎを完全に遮断できず、ある程度の誤作動も許容しながら機能するブラウニアンマシンである。今回、骨格筋や心臓拍動を駆動するブラウニアンマシンであるミオシン集団内の個々の分子動態を世界で初めて直視することに成功した。心臓拍動のメカニズムやミオシンの遺伝的変異を原因とする心筋症の理解、化学的なナノマシン設計への大きな指針を提供することができたと考えている。
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