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2017 年度 実施状況報告書

火山噴出物の塩素濃度マッピングに基づく噴火様式の支配要因の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K14376
研究機関北海道大学

研究代表者

吉村 俊平  北海道大学, 理学研究院, 助教 (20706436)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワードマグマ / 脱ガス
研究実績の概要

本年度は,天然試料を用いた珪長質マグマの脱ガス解析を行った.まず,以前に採取した新島向山火山のガラス質溶岩を対象とし,塩素濃度分布を分析した.塩素は他の揮発性成分に較べて拡散速度が数桁遅いため,脱ガスによって作られた濃度不均質を長らく保持している可能性がある.新島溶岩の薄片を作製し,FE-EPMAを用いて石基ガラス中の塩素濃度分布を調査した結果,石基ガラスには様々な塩素濃度不均質が認められ,気泡の成長,開放系脱ガス,圧密などのプロセスが普遍的に起きていることを見出した.また一部の気泡は,他の気泡とは逆に,メルトに再溶解していることが判明した.これらの結果に対して塩素の拡散モデルを適用し,それぞれのプロセスの時間スケールを推定した.さらに,石基の塩素濃度をメルト包有物の塩素濃度と比較することにより,発泡・開放系脱ガス・圧密という一連の脱ガスプロセスが,火道上昇中に数サイクル繰り返されていたことを見出した.さらに,溶岩の内部に発泡度の著しく異なる部分がパッチ状に不均質に存在するという観察事実に着目し,各部位での含水量と塩素濃度分布を検討した結果,脱ガスサイクルは空間的に不均質に,各パッチごとに起きている可能性があることを見出した.以上を基に,新しい脱ガスモデルを提案した.
本研究により,塩素濃度の空間分布測定(マッピング)は,脱ガス履歴を詳細に明らかにする新しいツールになることが示された.とくに,成長・溶解・圧密などの素過程の履歴を個々の気泡について明らかにできるという点は,気泡を集団として扱ってきた従来の手法では為し得ないものであった.本手法を用いることで,今後は火道内での各深度・各時刻での脱ガス過程を微分的に明らかにできると考えられる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

塩素の解析,解釈は順調に進んでいる.申請段階で想定してたものより,詳細で具体的な脱ガスモデルを構築できつつある.また,脱ガス実験にもすでに着手しており,天然データを裏付ける結果が得られつつある.

今後の研究の推進方策

次年度は,火道内の様々な深度で急冷した物質を対象に塩素分析を行い,火道内での脱ガス過程を全面的に明らかにする.同時に脱ガス実験を進め,脱ガス時の塩素の振る舞いを明らかにする.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Chlorine diffusion in rhyolite under low-H2O conditions2018

    • 著者名/発表者名
      Shumpei Yoshimura
    • 雑誌名

      Chemical Geology

      巻: 483 ページ: 619-630

  • [雑誌論文] 火山噴火を中枢制御するマグマの発泡とガス輸送の実態2018

    • 著者名/発表者名
      吉村俊平
    • 雑誌名

      可視化情報

      巻: 38 ページ: 16-20

  • [学会発表] Chlorine mapping as a new tool to investigate the degassing processes of silicic magma2017

    • 著者名/発表者名
      S.Yoshimura,M.Nakagawa,A.Matsumoto
    • 学会等名
      JpGU-AGU Joint Meeting 2017
  • [学会発表] 流紋岩質メルトの発泡実験と溶岩ドーム爆発条件の制約2017

    • 著者名/発表者名
      谷口瑞帆・吉村俊平
    • 学会等名
      JpGU-AGU Joint Meeting 2017
  • [学会発表] 等化学ポテンシャルモデルから予想される地殻流体組成:堆積盆流体の例2017

    • 著者名/発表者名
      吉村俊平
    • 学会等名
      日本鉱物科学会2017年年会

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公開日: 2018-12-17  

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