2019年度の研究では, (1) 従来行われていた小中地震の震源過程解析手法の高度化に成功した.具体的には,小中地震の短周期地震波形の継続時間の方向依存性をデータに用いることにより,それらの破壊伝播指向性,断層方向,放射効率の推定を可能にするとともに,従来から推定されてきた応力降下量の推定精度を向上することに成功した.その手法を,日本列島内陸域で発生した小中地震 (M>3.5-5)に適用することにより,応力降下量・破壊伝播指向性の空間変化の特徴が得られた.また,2011年東北沖地震により誘発された山形-福島県境の非常に活発な群発地震活動に含まれる微小地震 (M>2)の解析により,破壊伝播方向と流体分布の関係についての知見を得ることができた. (2) 顕著な前震活動を伴った 2017年秋田大仙地震,2017年鹿児島沖地震に伴う一連の地震活動を, (1)を含む多様なアプローチにより精査し,それらの前震活動・本震・余震が非地震性すべりや流体圧移動のような外的要因により引き起こされた可能性を示した.特に鹿児島沖の地震活動について,本震前の流体移動に伴うと考えられる地震波速度異常と,およびその本震後の回復を検出した.前震活動がほぼ見られなかった 2019年山形沖の地震活動についても調べることにより,余震活動に上記の地震と類似した震源の時間移動の特徴が見られること,類似したメカニズム (非地震性滑り,流体圧移動)が本震・余震発生に関わっている可能性があることが分かった.
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