研究課題/領域番号 |
17K14379
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西田 圭佑 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40530887)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 火星 / 核 / 液体 / 鉄硫黄合金 / 音速 / 高温高圧 / 超音波 |
研究実績の概要 |
地球型惑星の核に含まれる軽元素の候補の一つであるSは、地球外核条件ではFeメルトの音速を増加させると報告されているが、我々の月核条件での測定結果によるとSはFeメルトの音速を低下させる。本研究では、これまで空白領域となっている火星核条件での、FeおよびFe-S系メルトの音速を系統的に測定し、火星核の鉱物物理化学的地震波構造モデルを構築することを目的としている。 今年度は、これまでFe-Sメルト測定用に開発してきた高圧セルを使い、火星の核マントル境界に相当する20 GPaまでのFe57S43メルトの音速の測定を行った。また、このセルを純鉄測定用にカプセルをBNからサファイアに変更したセルを開発し、20 GPaまでのFeメルトの音速測定を行った。その結果、Feメルトの音速とFe80S20メルトの音速は20 GPaにおいて速度差がほとんどなくなることが明らかになった。一方、Fe57S43メルトの音速は、Fe80S20メルトの音速に比べ20 GPaまでの全ての圧力条件で遅い結果が得られた。この結果は、火星核条件でFe-Sメルトの音速が中間組成で極大値をとる可能性を示唆しており、中間組成での音速は単純な混合モデルで説明できないかもしれない。 また、20-30GPaの圧力領域での測定を目指して、TEL3.5mmの高圧セルの設計を行い、必要な高圧パーツを購入した。来年度以降はこのセルの最適化を行い、30 GPaまでのFe、Fe80S20およびFe57S43メルトの音速測定を行い、火星核条件での鉱物物理化学的地震波構造モデルを構築するとともにFeとFe-Sメルトの音速が逆転するか検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、TEL3.5mm の高圧セルの開発を行うと同時に20GPa までのFeメルトとFe57S43メルトの音速測定を最初の2年間で行う予定であったが、SPring-8とKEK PFの共同利用課題が無事に採択され、純鉄測定用の高圧セルも順調に開発できたため、予定を変更してFeメルトとFe57S43メルトの音速測定を優先して行った。その結果、初年度中にFe、Fe57S43メルトともに20 GPaまでの測定を完了することができた。一方、より高圧下での測定に向けたTEL3.5mmの高圧セルの開発は、上述の測定に時間と資金を集中させたため、予定よりも若干遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、先端3.5mmの高圧セルのパーツの最適化を行い、高圧セルの開発を完了させる。そして、Fe、Fe80S20、Fe57S43メルトの音速を30 GPaまで系統的に測定し、Fe-S系メルトの音速の組成、圧力依存性を明らかにする。これまでの測定結果を論文にまとめ、得られた知見を基に火星核がFe-S組成の場合の鉱物物理化学的地震波内部構造モデルを提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画を変更して前倒し請求を行い、消耗品を購入したが、若干の次年度使用額が発生した。次年度使用額と足し合わせても、計画変更後の請求額とほぼ変わらないため、予定通り使用する。
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