研究課題
本研究の目的は,CMOSセンサ上に分光フィルタが積層されたハイパースペクトルセンサを用いた惑星探査用の新たなマルチバンドカメラの測定手法を確立し,将来の惑星探査ミッションにおける使用を視野に入れた具体的な小型分離型のマルチバンドカメラの仕様例を作成することである.昨年度までの時点で,ハイパースペクトルセンサの評価測定系(センサ評価ボード)の構築および整備を行い,本ハイパースペクトルセンサのベースとなるCMOSセンサ部分の性能評価を行い,飽和電荷量の特性などを明らかにした.また,ハイパースペクトルデータ取得のための光学系の構築および予備的なデータ取得を行い,校正の実証など,基本的なハイパースペクデータ取得と解析の確立を行った.今年度は,本研究で評価対象としている撮像素子のベースとなっているCMOSセンサの放射線耐性の評価を実施した.ガンマ線照射試によるトータルドーズ試験による暗電流の増加および,プロトン照射試験によるホットピクセル生成の評価を行った.それぞれの試験で,放射線照射量を段階的に変えながら撮像素子の性能評価測定を実施した.ガンマ線照射試験,プロトン照射試験ともに,放射線照射量の増加に伴う,暗電流の増加が確認された.しかし,ダーク環境においても大きな電荷量を保持し続けるようなホットピクセルは生成しないことが確認された.よって本センサは,暗電流の影響が小さい短時間露光(ミリ秒オーダー)での測定においては,放射線環境においても使用が可能である事が確認された.
4: 遅れている
センサの評価システムの納入の遅れおよび,その後の不具合発生と修理に時間を要したため,当初の計画よりかなりの遅れが生じ,当初予定していた研究期間内で研究を完了することができず,研究期間を延長した.さらに今年度はコロナ禍の影響もあり当初予定していた研究を完了することができなかったため,再度研究期間を延長することとなった.今年度は撮像素子の放射線試験を実施し,撮像素子の性能評価を実施したが,その後センサ評価システムに不具合(故障)が発生し,撮像素子のデータ取得が不可能となってしまい,評価システムを修理する必要があったが,コロナ禍の影響もあり,修理に時間を要しており,再度の期間延長が必要となった.
センサ評価システムの修理が完了し次第,これまでに確立したハイパースペクトル取得方法に基づき,実際に岩石や隕石試料を用いたデータ取得を行い,複雑なテクスチャを持つ試料であっても,本ハイパースペクトルセンサにより取得したマルチバンド画像からスペクトルを正確に再現できることの確認を行う.これらの評価を通して,この新たなマルチバンド撮像方式を惑星探査用の小型分離カメラに用いるにあたっての問題点や改善点を洗い出し,可能なものについてはその対策を講じる.最終的に,将来の惑星探査ミッションに向けて,このハイパースペクトルセンサを用いた小型分離マルチバンドカメラの基本仕様を作成する.
昨年度までの時点で,使用するセンサの評価システムの納入の遅れ,さらに評価システムの不具合の発生とその修理に想定外の時間を要したため,計画が大幅に遅れていた.さらに,コロナ禍および再度の評価システムの不具合の発生により,今年度も当初の予定通りに研究を進めることができず,研究計画を次年度に延長することとなったため.測定試料の準備,学会参加費用,論文投稿料に使用予定.
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