研究課題
最終年度は,構築したハイパースペクトルイメージャ(HSI)を用いた画像取得システムで取得したデータから,精度の高いマルチバンド画像情報を作成する手法を確立した.本研究で注目しているHSIは,画素上に積層された特定の波長帯を透過する複数のフィルタにより,対応する波長のマルチバンド画像が得られるもので,マルチバンドカメラ小型化の鍵となるデバイスである.しかし,対象の帯域以外の光も少なからず感度を持つことがわかり,そのままでは大きな誤差を含んでしまうことが判明した.よって,注目する帯域外の光の影響を補正し,精度の高いマルチバンド情報を抽出する必要があり,それを実現する手法として,多変量回帰分析に基づく重回帰分析の一つである部分最小二乗法(PLS)を用いた.PLSでは,説明変量と,目的変量の双方を直交分解し,両者の相関の高い成分のみを抽出して重回帰を行うため,データに含まれる誤差が排除され,精度の高い回帰が実現される.通常,目的変量は試料の濃度などであるが,本研究では試料を測定した際の測定値自体を目的変量とすることで,注目する帯域の情報のみが抽出された,精度の高いマルチバンド画像情報を再構築することを目指した.実際に,構築したシステムによる取得データにこの手法を適用することで,精度の高いマルチバンド画像情報が抽出されることを確認した.研究期間全体を通じて,HSIのベースとなるCMOS撮像素子の性能評価(放射線耐性の評価を含む),HSIを用いたバルチバンド画像測定システムの構築,得られたマルチバンド画像生データの基本的処理方法の構築,得られたデータへ部分最小二乗法(PLS)を応用して適用することにより精度の高いマルチバンド画像情報を再構築する手法の確立を行った.これにより,HISを用いた,月・惑星探査機搭載用の小型のマルチバンドカメラの実現への目途が立った.
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