地震波可聴化による動的誘発地震の検出を目指して、まず、地震波可聴化システムを構築した。Matsubara et al. (2016)で用いた手法以外にも、可聴化音の割り当てを複数設定できるようにした。また、観測点の地域を区切って可聴化できるようにした。可聴化の際の再生速 度も任意に指定できるようにし、動的誘発地震聴取に適した再生速度を探すことができるようにした。2018年北海道胆振東部地震が発生した際には、地震波可聴化を即座に実施したが、2011年東北地方太平洋沖地震で聴取できたような明確な動的誘発地震は確認できなかった。この結果を踏まえて、地震波可聴化システムを改修し、より多数の地震波形データを同時に可聴化することが可能になった。改めて地震波可聴化による動的誘発地震が可能であるかどうかを確認するため、単独で発生した小地震の波形データを可聴化して、その聴取を試みた。その結果、マグニチュード2以下の地震については聴取が困難であることがわかった。 静的誘発地震の一例として、2011年東北地方太平洋沖地震によって静的に誘発された地震であると考えられる2011年・2016年茨城県北部の地震の研究を行った。余震分布からは、2011年と2016年に破壊された主たる断層は同一であることが確認された。地震波形データを用いた断層滑りインバージョン解析の結果、2011年(2回)と2016年の断層滑り領域、応力解放領域はほぼ相補的な関係にあることが明らかになった。また、GNSSデータ解析によって、2011年から2016年までの間に断層面にかかったと考えられる応力は、M6級の地震を再発させるにはあまりに微小であると推定された。したがって、2011年(2回)と2016年の地震は、いわゆる繰り返し地震ではなく、同一断層上の異なる領域に蓄積した弾性エネルギーによって発生したと結論付けた。
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