東北日本下に沈み込む太平洋プレートと陸側のプレートとの固着域に関して,その下限(深い側の端)の深度及びその時空間変化を,GNSS観測から得られる変位速度場の空間勾配解析に基づいて推定するため,データ解析を行った.昨年度までの解析によって,2003年十勝沖地震の影響が大きいことが明らかになった北海道地方に関して,2011年東北地方太平洋沖地震後のデータに解析期間を広げることによって,固着深度の下限の時間変化について,その変動周期の検出精度の改善を試みた.しかしながら,上下変位速度場の推定誤差が想定していたよりも小さくならず,残念ながら,大きく精度を改善することはできなかった. また,国土地理院が公表している,電子基準点の日々の座標値データを用い,週ごとに更新される新たなデータを随時取り込んで自動的に解析を実行するとともに,解析結果に基づく作図ならびにWeb上での公開を行うシステムの構築を実施し,同システムの試験的な運用を開始した. 得られた成果について,新学術領域研究「スロー地震学」が2019年10月末に開催するチリ大学における国際ワークショップにおける発表を予定していたが,サンチアゴ市内における暴動の発生による同ワークショップは中止となってしまった.さらに,2020年に入って以降,新型コロナウイルスの感染拡大による学会・ワークショップ等が相次いで中止となったしまったため,補助事業期間中に発表の機会を得ることができなかった.
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