研究課題/領域番号 |
17K14390
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡邉 俊一 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (60785195)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 渦状擾乱 / ポーラーメソサイクロン |
研究実績の概要 |
本年度は、気象庁メソ解析(MA)と気象庁55年長期再解析(JRA55)からの領域ダウンスケーリング(DSJRA55)を用いて、冬季日本海上の渦状擾乱の統計的調査を行った。まず、MAから渦状擾乱を抽出し、特に日本海西部の渦状擾乱に着目して、発生環境場の解析を行った。その結果、渦状擾乱の発生時には、上層トラフや発達中の温帯低気圧が存在することを明らかにした。さらに、渦状擾乱が日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)上で発生していることを示した。また、渦状擾乱の発生位置や移動経路・JPCZの位置などが総観スケールの上層トラフの移動経路によって、予測できることを明らかにした。この結果をMonthly Weather Review誌に掲載した。 続いて、DSJRA55を用いて、1958-2012年までの54冬季について渦状擾乱の長期的な渦状擾乱の統計的調査を行った。まず、DSJRA55から得られた渦状擾乱の分布をMAから得られた分布と比較することにより、DSJRA55でも渦状擾乱が再現されていることを確認した。渦状擾乱の年々変動を調べると、1987年を境に1冬季あたりの発生数が減少していることが分かった。これは、極域での気候のレジームシフトに対応していると考えられる。また、渦状擾乱の発生数と全球スケールの気象場との関連を調べ、全球規模では海面気圧分布で日本の東に低気圧偏差があり、上層では日本上空に低気圧偏差が存在する冬に渦状擾乱の発生数が多いことを明らかにした。この結果については2018年度気象学会春季大会での発表を受理され、発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DSJRA55をDIASからダウンロードしたが、DIASが大量のファイルのダウンロードに対応していなかったためデータ取得に時間がかかった。その後、大量ファイルのダウンロードに対応したため、データ取得は終了した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、DSJRA55を用いた、渦状擾乱の長期解析を進め、特に北極振動やENSOなど全球規模の変動と渦状擾乱の関連を調べ、論文にまとめる予定である。また、地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)などの将来気候変動予測データのダウンスケーリングデータを用いて、渦状擾乱の将来変化の解析を行い、変化の要因について解明する。特に温暖化時の大規模スケールの変化と渦状擾乱の変化の関連に着目して解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
DSJRA55のデータ取得に時間がかかり、年度内に論文を投稿することができなかった。そのため、論文の校正費及び掲載費として使用する予定である。
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