温帯低気圧は中高緯度で発生・発達する水平スケール3000-5000kmの大気現象である。本研究は、日本付近で発達する温帯低気圧特有の構造を明らかにするために、長期再解析データを用いて日本付近で発達する温帯低気圧の構造を調べると共に、北西大西洋で発達する低気圧との違いを調査した。本年度は、特に環境場のジェット気流の構造の違いに着目し、ジェット気流に対して低気圧が発達する位置による低気圧構造の違いを調べた。ジェット気流の入口左側、入口右側、出口左側、出口右側における低気圧の構造の違いを調べたところ、特にジェット気流の出口左側と入口右側で構造に違いがあることがわかった。ジェット気流の出口左側では、温暖前線が比較的弱く、寒冷前線が南に延びる構造が見られた。一方、入口右側では、温暖前線が強く発達していた。これらの特徴は北西太平洋で発達する低気圧と北西大西洋で発達する低気圧で同じであった。一方、北西太平洋で発達する低気圧と北西大西洋では、温暖前線の構造に違いが見られる。北西太平洋で発達する低気圧は温暖前線が低気圧の南東領域で発達しやすいのに対して、北西大西洋の低気圧は低気圧の北東で温暖前線が発達しやすい。この違いは、ジェット気流に対して低気圧が発達する位置に関係なく見られる。本研究は、低気圧の構造とジェット気流の関係および、海域間の低気圧構造の違いの理解に貢献するものである。また、低気圧構造の理解の進展は、内部の降水システムや、より大規模な循環場を理解する上でも重要である。
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