研究課題/領域番号 |
17K14392
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
片岡 崇人 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 気候モデル高度化研究プロジェクトチーム, ポストドクトラル研究員 (00794786)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大気海洋結合フィードバック / 熱帯大気海洋結合系 / 南北モード現象 / 海洋混合層 / 気候変動 |
研究実績の概要 |
産業や社会生活に大きく影響する干ばつや豪雨等の極端現象の母胎となる気候変動現象のメカニズムを理解する事は、その予測に向けた重要な課題である。例えば、熱帯大西洋で最も卓越する大西洋南北モードは、ハリケーン発生数の変動を通じて周辺国に災害をもたらすことが知られている。この赤道(より正確には熱帯収束帯の平均的な位置)を対象軸として正と負の海面水温(SST)偏差を伴う大西洋南北モードの成長には、エルニーニョ/南方振動や北大西洋振動等の外部強制のほか、風-蒸発-海面水温(WES)フィードバックと呼ばれる、熱帯大西洋に内在する大気海洋結合過程が重要となることが指摘されている。 本研究では、現象の本質を担う要素のみで構成された理論モデルを構築/解析することで、熱帯大西洋には「風-混合層-海面水温フィードバック」及び「風-蒸発-混合層-海面水温フィードバック」という、これまで全く認識されていなかった二つのフィードバックが存在しうることを示した。また、これらのフィードバックは、従来認識されていた「風-蒸発-海面水温フィードバック」と比べて同程度、あるいはそれ以上の強度を持つことが明らかになった。つまり、本研究でその存在を示した二つの大気海洋結合フィードバック過程は、従来のフィードバック過程よりも、より異常気象の誘発に寄与する。 さらに、観測データおよび、気候モデルを用いたシミュレーション結果を解析することにより、本研究で発見したフィードバック過程が、実際に大西洋南北モードの生成に働いていることが明らかになった。 本研究では大西洋をターゲットとしたが、南北モード現象は熱帯太平洋にもその存在が報告されており、今回明らかになった「風-混合層-海面水温フィードバック」及び「風-蒸発-混合層-海面水温フィードバック」は、他の海域への応用可能性も持つものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論モデルの構築および解析により、当初の予定通り、熱帯大気海洋結合系に二種の新たなフィードバック過程が存在することを示すことができた。また、これらのフィードバックは、従来認識されていたフィードバックと同程度以上の強度を持ち、すなわち瑣末なもではないこと、そして実際、観測データや気候モデルの解析から、現実にもこれらのフィードバック過程が働いていることが確認され、当初の想定通りの結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
まずは初年度で得られた成果を論文にまとめ、専門誌に投稿する。 大気大循環モデルや、海洋混合層モデル、海洋大循環モデルを用いた各種数値実験から、より現実的な状況下におけるフィードバック過程の時空間的特性を調べる。具体的には、海洋力学の役割や季節変化の役割に加え、海域ごとの特性、大陸の地理的分布の役割等の詳細を調査する。 海洋混合層モデルは必要に応じて自ら構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿料として一定額を確保していたが、年度内の投稿・出版が間に合わなかったため次年度使用額が生じた。次年度中には論文出版が見込まれるので、その際に使用する予定である。
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