研究実績の概要 |
火星着陸機が撮影した画像に写る地表の模様と,火星周回機が撮影した着陸地点付近の画像を比較して,着陸機が撮影した画像に写るダストデビルと着陸機との距離を導出する予定であった.しかし,先行研究(Greeley et al.,2006;2010)で示されていない観測日の着陸機画像には,地表の模様が鮮明でないものが多量に含まれていた.ダストデビル-着陸機間距離が計測できなければ,ダストデビルの重要な特徴である直径を計測できない.そこで,画像ヘッダからSpice Toolkit(https://naif.jpl.nasa.gov/naif/toolkit.html)を用いて導出できる着陸機の傾きや測器の視線ベクトル,およびMars Reconnaissance Orbiter(MRO)搭載のHiRISEで撮影された高解像度画像から作成されたDigital Terrain Model(DTM)を組み合わせることで,地表面の模様が鮮明でなくてもダストデビル-着陸機間距離を導出する方法を開発した.これにより,Spiritのほとんどの観測画像においてダストデビルの直径を見積もることが可能になった.ダストデビルを自動検出するアルゴリズムは,精度を向上させたうえで前年度までに開発できていた.その精度検証のための正解づくりの意味も含めて,目視によってダストデビルを計数できるインターフェースを開発し,sol0443からの1火星年で各solにおけるダストデビル発生数を数えた.その結果,観測時の地方時や季節変化では説明できないダストデビル発生数の変動がみられた.特に,正午付近のダストデビル発生数は2日周期で変動する可能性がある.周期2日の変動は中緯度帯の地表気圧にも見られる.
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