最終年度となる令和3年度は、前年度までに調査した熱帯太平洋・インド洋・大西洋の海盆間相互作用を通じた夏季アジアモンスーンに対する影響について総合的に検討した。情報理論に基づく因果ネットワーク解析を長期間の再解析データを用いて行ったところ、一連の事例研究で明らかになった海盆間相互作用の季節的な因果影響が確認された。この結果は、本研究でモデル実験を用いて示した関係を裏付けるものである。 さらに、コペルニクス気候サービス(C3S)および、世界気候研究計画(WCRP)の気候システム予測プロジェクト(CHFP)のマルチモデルの過去予測データを用いて、熱帯太平洋(ENSO)と熱帯インド洋の遠隔影響の再現性と予測精度について解析を行った。その結果、過去10年間の季節予報モデルの夏季アジアモンスーンの精度向上が確認された。より新しいモデルであるC3Sのモデルは、CHFPのモデルに比べ、夏季アジアモンスーンの降水量に対する遠隔影響および気候場の再現性が向上していることも確認された。また、これらの再現性が夏季のアジアモンスーン域の降水予測と相関することがわかった。このことは、モデルにおける遠隔影響の再現性や気候再現性を再現することが、夏季アジアモンスーンの予測性能の向上に重要であることを示唆する。これらの結果は、第7回国際モンスーンワークショップにて発表した。現在、これらの結果に関する論文を執筆中であり、今後、学術誌において発表する予定である。
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