研究課題/領域番号 |
17K14397
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岡崎 淳史 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (10790842)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 古気候復元 / データ同化 |
研究実績の概要 |
本研究は、情報が限られる古気候のなかで情報を最大限活かし、これまでにない精度で古気候を復元するためのデータ同化手法の開発を目的とする。本年度はオフラインデータ同化手法の高度化に着手した。具体的には、Running-In-Place (RIP)を実装し、これを評価した。 RIPは、数値天気予報において、データ同化サイクルを開始してから誤差が十分に小さくなるまでのスピンアップ時間を短くするために提案された手法である。通常のデータ同化では同じ観測は一度しか同化しないが、RIPは複数回同化する。予報アンサンブルが十分に観測に拘束されていない場合に有効な手法であり、海面水温のみで大気を拘束するAMIP型ランで構成されたアンサンブルを用いるオフラインデータ同化には有効であると期待できる。昨年度に引き続き、大気モデルには簡易気候モデルであるSPEEDYを用い、データ同化手法にはアンサンブルカルマンフィルタ(EnKF)を用いた。観測はPAGEs (2013)の観測分布を模した地表気温の年平均値である。 RIPを用いた結果、地表気温の二乗平均平方根誤差(RMSE)が約4%減少し、空間パターンのアノマリ相関(ACC)が0.55から0.63に改善した。また、RMSE/ACCが最小/最大になるのに要する繰り返し同化回数は7回/6回であった。観測誤差に対する感度、およびEnKFが想定する「観測誤差の誤差」に対する感度を調査したところ、得られる改善率や必要な繰り返し同化回数は変化するものの、改善傾向は共通して見られた。RIPは、オフラインデータ同化の精度をロバストに改善する手法であると言えるだろう。一方、モデルにバイアスがある場合、RIPによりACCの悪化が観察されたため、モデルバイアス補正は必須であることも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の「今後の研究の推進方策」の通り、オフラインデータ同化手法を改良する研究を進めることができた。一方で、フル海洋モデルを用いたオンラインデータ同化手法開発は、研究に着手したものの、まだ十分な成果は得られていない。以上を鑑みて、達成度としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究を遂行していく中で、オフラインデータ同化をさらに改善するいくつかの着想を得た。今年度に引き続き、来年度もオフラインデータ同化手法の高度化に取り組む。また、本年度に達成できなかったフル海洋モデルを用いたオンラインデータ同化手法開発にも引き続き取り組み、引き続き本課題の目的である「高精度古気候復元に向けたデータ同化手法開発」の達成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品が想定よりも安価に購入できたため、次年度使用額が生じた。次年度に新たな物品を購入することでこれを使用する。
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