研究課題
本研究は、情報が限られる古気候のなかで情報を最大限活かし、これまでにない精度で古気候を復元するためのデータ同化手法の開発を目的とする。本年度は大気海洋結合オンライン同化を実装し、これを評価した。古気候復元研究において、データ同化は時間平均値の推定に用いられてきた(以下、「オフライン同化」と呼ぶ)。一方、オンライン同化は時間平均値とその後の同化サイクルにおけるモデル積分の初期値の両方を解析する。観測の時間分解能に比べて対象とするシステムの予測可能性が十分に長い場合、オンライン同化は初期条件の情報を活用することでオフライン同化を上回る性能を発揮すると期待される。本研究では、大気モデルSPEEDYにスラブ海洋モデルを結合した大気海洋結合モデルSPEEDY-SLABを用い、オンライン同化とオフライン同化を比較し、予測可能性との関連性を調査した。この結果、予測可能性の長さが同化する観測の時間分解能より長い場合、オンライン同化による復元はオフライン同化による復元の精度を上回ることが分かった。また、予測可能な時間が長いほど、両者の精度の差が拡大することが分かった。事前に予想されたことではあるが、予測可能性の延長には海洋が重要な働きをしている事も確認できた。上記は比較的簡素な結合モデルを用いた理想化実験の結果であり、この解釈を現実問題に適用する際には注意が必要であるが、古気候観測の時間分解能は一年程度であり、また海洋の予測可能性は十年以上に及ぶ場合もあることを考慮すると、オンライン同化を用いることで既往研究を上回る精度で古気候復元が実現できる可能性が示された。
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
Journal of Geophysical Research: Atmospheres
巻: 126 ページ: -
10.1029/2020JD034214
10.1029/2021JD035397