研究課題
内部磁気圏において、イオン・相対論的電子の消失過程に寄与すると考えられている電磁イオンサイクロトロン波動について、あらせ衛星が観測した電磁場データを用いて解析を行い、シミュレーション研究との比較を行った。Hilbert-Huang変換と呼ばれる非線形信号解析手法を導入し、瞬時周波数と瞬時振幅の時間変化を求め、Fourierスペクトル解析では捉えられない速い周波数変化を解析した。この手法によって得られた瞬時周波数および瞬時振幅の変化が、理論的に示唆される周波数変動率と一致していることが示された。また、Shoji and Omura [2013]で理論的に示唆した通り、サブパケットが存在する時間範囲においてEMIC波動の周波数が変化している様子が見られる。さらに、フーリエ変換によるスペクトル解析では見えない、速く詳細な周波数変化が捉えられている。同様の早い変化は、シミュレーション結果にも見られる。また、その早い周波数変化から、著者らはEMIC波の励起に貢献しているプロトン粒子の位相空間での運動・分布の偏りを明らかにした。位相空間中での分布の偏りが動くことにより、一時的な周波数上昇・降下が起きることを示した。また、この分布の不均一は、シミュレーション中でも同様に確認される。従来の非線形理論では無視されている波動の中の微細な変化の存在およびその効果をあらせ衛星データ・シミュレーションから初めて示した。本成果は、波動の多次元的な伝搬過程における普遍的な要素である波動周波数から、波動生成領域における様子がわかることをシミュレーションの裏付けのもと衛星データから明らかにしたものである。本成果は、Geophysical Research Lettersに掲載済みである。
2: おおむね順調に進展している
シミュレーションによる解析に加え、あらせ衛星データとの比較解析を行うことで、本研究が対象としている電磁イオンサイクロトロン波動の多次元的な発展に対して多角的な視点から解析が行えているため。
今後はよりシミュレーションコードの発展を進め、多次元空間での伝搬の様子および粒子との相互作用への影響を詳細に解析する。衛星データ解析との比較も同時に密に行い、より現実の内部磁気圏における電磁イオンサイクロトロン波動のプラズマ環境への影響についての理解を進める。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 6件、 招待講演 4件)
Geophysical Research Letters
巻: 45 ページ: 13,199~13,205
https://doi.org/10.1029/2018GL079765
Science
巻: 361 ページ: 1000~1003
10.1126/science.aap8730