令和元年度には,仙台湾周辺陸域の活断層による水平短縮量の見積もりをより確かにするために,既存の反射法地震探査と同測線において,CSAMT(Controlled Source Audio-frequency Magneto-Telluric)探査を実施した。探査は,約6kmの測線で測定を行い,標準50mの間隔で観測点を密に設置した。測線から北に約12km離れた地点に測線と平行に約1.2kmの長さの送信源を設置し,33の周波数の電磁波を発生させることにより,地下の地質構造を明らかにした。その結果,測線東側の平野部では,地表から深さ500m付近にまで見られる厚さ500m程度の低比抵抗領域が,平野と丘陵部の境界付近では,地表から100m付近の厚さにまで変化している様子が得られた。CSAMT探査の結果と既存の反射法地震探査および重力探査の結果を比較すると,仙台平野南部に伏在する西傾斜の活断層の断層運動によって,先新第三系の基盤岩およびその上位に堆積する中新世以降の堆積物が,大きく撓むような変形(撓曲変形)を受けていることが確実となった。また,その他にも丘陵頂部付近にも,部分的な低比抵抗領域が見られ,鮮新世以降の短縮変形に伴う断層である可能性が示唆された。これらの調査により明らかになった地下の地質構造を,バランスドクロスセクション法を用いて,活断層運動に伴った水平短縮量を計算した。その結果,対象とした仙台平野南部では,鮮新世以降に360mの短縮を伴っていることが明らかになった。また,反射法地震探査記録による明瞭な堆積構造は不明であるが,CSAMT探査の結果から低比抵抗領域の下限付近に先新第三系の基盤岩が位置すると考えると,中新世の日本海拡大と同時に,丘陵部の西側では,約300-400m程度の伸張変形が残存していると考えられる。
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