研究課題/領域番号 |
17K14405
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永冶 方敬 東北大学, 環境科学研究科, JSPS特別研究員(PD) (10795222)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アメリカ・ネバダ州の変成コアコンプレックス / シークレットパス / 三重県飯南地域中央構造線 |
研究実績の概要 |
本研究課題において主な調査地域であったアメリカ・ネバダ州イーストハンボルトレンジ及びルビー山地の野外地質調査と試料採取を南カリフォルニア大学を拠点に実施した。またそれらの野外調査記録をまとめた。イーストハンボルトレンジ及びルビー山地での採取試料に関しては岩石試料を定方位試料として採取し、約30試料の岩石試料に関して薄片試料作成が完了し、偏光・電子顕微鏡観察を含め分析を開始している。本年度の野外調査では主にエンジェルレイク、シークレットパス及びラモイルキャニオンにおいて重点的に調査、試料採取を行った。中でもシークレットパスで採取された岩石試料は、大陸地殻内での高歪領域を保存していると思われる岩石組織を示す岩石試料が多く見られ、本研究課題に適した試料が採取できた。これら採取試料の分析から大陸地殻岩の構成鉱物の変形時の温度圧力などの各条件と変形メカニズムの推定から大陸地殻内の岩石強度推定を行っていく。 このほか、上部マントル構成岩類に関連した岩石高圧加熱実験に加え、四国三波川帯及び関東三波川帯釜伏山周辺、及びアメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ及びジェードコーブ周辺から得られた天然試料の観察・分析を行い、これら上部マントル構成岩類の岩石強度に関して得られた知見からリソスフェアの強度推定を実施していく予定である。 現在まで研究は順調に進んでおり、本年度得られた研究成果を筆頭著者として国内外の学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アメリカ西部変成コアコンプレックスでみられる大陸地殻構成岩類の変形構造の詳細な観察から異なる深さ起源を持ち、変形程度の異なる岩石試料セットを採取することは本研究課題の遂行に重要であったが、現在までにネバダ州イーストハンボルトレンジ及びルビー山地での野外地質調査を行い、岩石試料の採取を実施した。採取岩石試料は今後順次薄片試料作成と試料分析を実施していくが、現在までに野外調査記録をまとめ、イーストハンボルトレンジでの約30試料の薄片作成が完了しており、室内分析を開始している。 これらに加え、蛇紋岩試料を用いた高圧加熱実験では、アンチゴライトとブルース石の分解反応によるかんらん石の生成に成功した。この実験はブルース石と蛇紋石鉱物であるアンチゴライトが含まれた天然試料を用いて、実際の沈み込み帯ウェッジマントル領域でブルース石とアンチゴライトの脱水分解が予想される温度・圧力条件と同様の温度・圧力条件下で実施した。また実験試料の反応前後の直接的な比較を行うことに成功しており、実験試料は反応前後の鉱物化学組成や結晶方位関係の測定を行っている。これらの分析結果は沈み込み帯ウェッジマントル起源の天然試料で見られるブルース石とアンチゴライトの反応によるかんらん石の分析と整合的な結果が得られている。 また四国三波川帯及び関東三波川帯釜伏山周辺の野外調査、及びアメリカ・カリフォルニア州ジェードコーブ周辺での野外地質調査から得られた岩石試料に対して、構成鉱物の同定とこれらの結晶方位測定を行った。特に釜伏山とジェードコーブから採取した滑石片岩中の滑石の鉱物結晶方位測定に成功し、滑石の結晶軸定向配列パターンを報告した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、今後も変成コアコンプレックスであるアメリカ・ネバダ州イーストハンボルトレンジ及びルビー山地の調査を引き続き実施し、大陸地殻構成岩類の地質構造の調査と採取試料の分析から、大陸地殻構成岩類の各深度における変形組織の詳細な微細観察を行う。 本年度では主にエンジェルレイク、シークレットパス及びラモイルキャニオンから岩石試料の採取を行い、特にシークレットパスで採取された岩石試料では、大陸地殻内での高歪領域を保存していると思われる岩石組織を示す岩石試料が多く見られ、本研究課題に適した試料が採取できた。そのため、これらのシークレットパスの採取試料と新たに得られる採取に対して今後、変形時の各条件や構成鉱物の変形メカニズムを推定する目的で、南カリフォルニア大学でのFE-SEM-EBSD装置を始めとする南カリフォルニア大学内及び協力研究室の分析装置による分析を実施していく。 また本年度、その他三重県飯南地域の中央構造線近傍の領家変成帯から得られた地殻構成岩類や所有する四国三波川帯及び関東三波川帯釜伏山周辺の野外調査、及びアメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ及びジェードコーブ周辺での野外地質調査からの得られた上部マントル構成岩類に関しても岩石試料の分析から岩石強度を推定することで、リソスフェアの岩石強度推定に活用していく予定である。 来年度、引き続き野外調査と採取試料の分析を順次行うと同時に、本年度の成果の国際誌への投稿を実施していく予定である。
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