これまでの本研究課題研究では南カリフォルニア大学を拠点にアメリカ・ネバダ州イーストハンボルトレンジ及びルビー山地の野外地質調査から得られた定方位岩石試料の薄片化を行い、試料分析を開始していた。昨年度は調査地域の中でもシークレットパスで採取された岩石試料が、大陸地殻内での高歪領域を保存していると思われる岩石組織を示す岩石試料が多く見られた。本年度はアメリカ・ネバダ州イーストハンボルトレンジの試料分析を継続して行い、特にエンジェルレイクで採取された岩石試料の室内分析を実施し、エンジェルレイク周辺では石英の深部から浅部への各深さ領域での変形をそれぞれ示唆するgrain-boundary migration、subgrain rotation recrystallization、grain-boundary bulgingの各変形微細組織が同一剪断帯内で見られた。そのためEPMAによる鉱物組成分析を実施した。またこのEPMA 分析をもとにEBSD分析のための最適な結晶構造データベースを検討した上で、EBSDによる剪断帯の広域結晶方位マッピングを実施した。これまでに得られた採取試料の分析結果をもとに大陸地殻岩の構成鉱物の変形時の各条件と変形機構を推定し大陸地殻内の岩石強度推定を実施していく。 このほか、昨年度の四国三波川帯及び関東三波川帯釜伏山周辺、及びアメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ及びジェードコーブ周辺から得られた天然試料の観察・分析に加え、本年度はギリシャ・シロス島の野外調査を実施した。また昨年度に引き続き上部マントル構成岩類に関連した岩石高圧加熱実験を継続して実施することで上部マントル構成岩類の岩石強度に関して得られた知見からリソスフェアの強度推定を実施していく予定である。
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