研究課題/領域番号 |
17K14406
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
澤井 みち代 千葉大学, 大学院理学研究院, 特任助教 (20760995)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海山 / 沈み込み / 地震 / 摩擦 / 緑色岩 |
研究実績の概要 |
海底地形にある突起部分が沈み込んだとき、そこが引っ掛かりとなり、プレート境界面に大きな摩擦が働くとことで、固着が強くなりアスペリティが形成されると推測されることから、沈み込む海山はアスペリティとしてふるまう可能性が指摘されている(例えば、Cloos, 1992)。一方、Kodaira et al., (2002) では、沈み込んだ海山により強まったプレート間の固着が、破壊の伝播を妨げる働きをするとされ、Mochizuki et al., (2008) では、大地震の震源域は海山の沈み込み前方の麓付近に発生し、海山上では地震活動が見られないことから、海山上のプレート境界は固着度が弱く、海山自体はアスペリティとしてふるまわない可能性を指摘している。このように、観測や理論的研究等から沈み込む海山と地震の関係に関して様々な考えが示されているが、未だにその実態は明らかになっていない。よって本研究では、海山由来の岩石を用いた摩擦実験を行い、海山がどのような摩擦特性を持つのかを定量的に評価し、地震発生時にどのようなふるまいをするのかを検討した。 現在までに、山口県秋吉台にて採取した石灰岩に付随する緑色岩を使用し、回転式摩擦試験機を用いた低速~高速摩擦実験をおこなった。その結果、低速から地震発生時のすべり速度に至るまでの中速度領域において、緑色岩は速度が上昇するにつれ強度が大きくなる速度強化の性質を示すことが明らかになった。また、東北沖プレート境界断層や南海トラフ付加体物質に比べ非常に強い強度を持つことがわかった。先行研究と本研究結果を考慮すると、海山の物理的形状により沈み込む海山の麓付近に地震発生域が形成されるが、海山の摩擦強度が強く局所的な固着の強まりが発生すること、及びその速度強化の性質から、破壊の伝播を止めるバリアとしてふるまう可能性があるのではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、当初予定していた回転式摩擦試験機を用いた摩擦実験をおこなった。震源核形成がなされる低速から地震発生時の高速度領域までの幅広い速度領域で海山の摩擦特性を検証し、プレート境界断層や付加体物質との強度比較をおこなうことで地震発生時に与える効果を考察している。成果は今後学会にて発表を予定しており、また必要に応じ追加実験や解析を加え、国際誌掲載に向けて準備を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本研究課題を推進すべく、引き続き摩擦実験を実施する。大地震につながるプレート境界型地震はアスペリティの破壊によって起きると指摘されている。しかし、アスペリティは何が原因で形成されるのか、その実体については推測の域を出ていない。海底地形の凹凸の代表的なものであり、アスペリティの形成要因の一つとして海山の沈み込みが考えられていることから、「海山は地震のアスペリティになり得るのか」を摩擦実験から検討する。実験にはガス圧式高温高圧変形実験装置を使用し、高圧条件下で摩擦実験をおこない、摩擦強度に対する温度・圧力・速度の効果を検証する。また、今年度までに得られた実験試料の組織観察をおこない、解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の育児休業の取得により、研究期間の延長も含め研究計画を再度組み直している。それに基づき、本年度予定していた摩擦実験は実施することができ、研究計画は概ね順調に進行している。次年度実施予定の高温高圧実験に向けても、本年度の回転試験機を使用した実験と並行して可能な限り準備を進める予定であったが、ガス圧式高温高圧変形実験装置の調整や細部の改良に時間を要したため、実験に必要な消耗品の購入を中心とした実験関連経費は次年度に使用することになった。予算は実験関連費および研究協力者との打ち合わせ等に使用予定である。
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