研究実績の概要 |
海底地形にある突起部分が沈み込んだとき、そこが引っ掛かりとなり、プレート境界面に大きな摩擦が働くとことで、固着が強くなりアスペリティが形成されると推測されることから、沈み込む海山はアスペリティとしてふるまう可能性が指摘されている(例えば、Cloos, 1992)。一方、Mochizuki et al. (2008) では、大地震の震源域は海山の沈み込み前方の麓付近に発生し、海山上では地震活動が見られないことから、海山上のプレート境界は固着度が弱く、海山自体はアスペリティとしてふるまわない可能性を指摘している。このように、観測や理論的研究等から沈み込む海山と地震の関係に関して様々な考えが示されているが、未だにその実態は明らかになっていない。よって本研究では、海山由来の岩石を用いた摩擦実験を行い、海山がどのような摩擦特性を持つのかを定量的に評価し、沈み込んだ海山がアスペリティとしてふるまう性質をもつのかを検討した。 令和3年度は、実際に海山を構成する玄武岩を使用し、ガス圧式高温高圧三軸試験機を用いた高温高圧摩擦実験をおこなった。その結果、断層すべりの安定性を示すパラメータ(a-b)値は温度が上昇するに伴って正から負へと変化することが明らかとなった。これは、海山が温度の上昇とともに、つまり沈み込む深度が深くなるほど不安定な挙動を示しアスペリティとしてふるまう可能性を示唆すると考えられる。また、間隙水圧の上昇に伴い(a-b)値が変化する予察的な結果を得ることができた。今後、実験時の脱水の影響なども考慮したより精度の高い摩擦の速度依存性を決定するとともに、特に海山の沈み込みと圧力の効果について探っていきたい。
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