研究課題/領域番号 |
17K14407
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 大和 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員 (70782019)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 陸成炭酸塩 / 石筍 / トゥファ / 炭酸凝集同位体 / 酸素同位体 / 古気候 / 温度復元 |
研究実績の概要 |
本年は広島県・岐阜県産の2本の石筍試料の分析とデータ解析を主におこない、前者の成果を国際誌Quaternary Science Reviews(QSR)に“Influences of temperature and the meteoric water δ18O value on a stalagmite record in the last deglacial to middle Holocene period from southwestern Japan”というタイトルで掲載した。この成果は、日本国内から初めて石筍の炭酸凝集同位体温度記録の解釈と報告をした論文となり、本研究で用いる安定酸素同位体・凝集同位体記録の複合的な解釈手法の有効性を証明したばかりでなく、研究に適した試料の条件やその判別法を提示できた点でも大きな進展であった。また、岐阜県産石筍から得られた結果についても英語論文の作成も進展させたほか、共著者として陸域炭酸塩岩に関わる2本の論文公表に参加した。 これらの成果公表作業に並行して、雨水の酸素同位体組成の季節特性を明らかにするため、集雨装置を作成し、静岡県静岡市・浜松市で継続した雨水採取をおこなった。また、同様の集雨装置を用いた作業を宮城県仙台市と鹿児島県奄美市の研究協力者に委託し、各月の雨水を収集している。 鹿児島県徳之島では、石筍の発達する鍾乳洞やトゥファの発達する海岸の調査をおこない、滴下水や流水の化学組成や温度を測定したほか、いくつかの地点に温度ロガーや沈殿観察用のタイル板を設置し、温度や炭酸塩沈殿速度のモニタリング中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、国や大学の指針として研究活動に制限が課される中、研究計画の大幅な見直しが迫られた。野外における炭酸塩試料の収集や調査が十分におこなえない代わりに、多くの時間をデータ解析や論文執筆に費やし、筆頭論文を関連分野の有力国際誌Quaternary Science Reviews誌にオープンアクセスとして掲載したほか、共著として2本の国際誌論文に参加した。 特に、筆頭として著した論文は、従来の石筍古気候学の限界を打破する、国際的にもインパクトのある成果であり、陸域の古気候研究に大きな貢献を果たすと期待される。岐阜県産石筍から得られた結果についても英語論文の作成中であり、順調に成果公表を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は一部未分析試料の炭酸凝集同位体分析を重点的におこなう。この分析には膨大な時間を要するが,測定データの解析や研究成果の公表準備を平行して進める。 分析結果は順次,国内外での学会や学術論文で公表する。 本年はまず岐阜県産石筍から得られた測定データについて、2020年度に公表した広島県での結果と比較しながら英語論文を作成し、投稿する予定である。 また、日本各地の雨水の酸素同位体組成の季節特性を明らかにするため、静岡県、宮城県、鹿児島県奄美市で引き続き水試料 の収集を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、国立台湾大学や九州大学での分析をおこなうことができず、分析旅費や必要経費として支出予定であった費用の大部分を使用しなかったため。
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