本研究ではマイクロウェア(歯に残る摂食時の微細な痕)を三次元的に解析し、初期哺乳類の食性進化を解明する事を目指している。マイクロウェアの三次元解析は手法が開発途上であり、食性推定のためのプロトコルの確立が重要である。これまでの現生の二ホンジカや二ホンカモシカを用いた研究により、マイクロウェアの傷の深さ等が摂食物中のイネ科の割合と相関する事はかなり明確になってきた。これらの成果は複数の国際学会で発表する事ができた。 初期哺乳類と同じ三畳紀に生息した海生爬虫類の板歯類の食性解明を目指した取り組みもさらに進め、ヨーロッパの博物館で採取した板歯類のプラコダスやキアモダスのマイクロウェアとの比較のために底生生物を捕食する現生サメのマイクロウェアを沖縄美ら島財団が保有する標本から、さらに海草を食べるジュゴンのマイクロウェアを国立科学博物館の標本から採取した。これらのマイクロウェアをスキャンし、板歯類との類似性を調べたところ、板歯類の歯の凹凸は歯が平らなジュゴンと、歯がでこぼこしているサメ等のちょうど中間に位置する事が明らかとなり、この結果は国際学会で発表した。 植物食恐竜のマイクロウェアの採取も進めており、中国の複数の研究機関でのマイクロウェア分析用の歯型の採取、さらには国内の複数の研究機関でもマイクロウェアを採取した。将来的に研究を進め恐竜では世界初となる三次元マイクロウェア解析を行いたい。 昨年度に開発した系統関係から生物地理区の関係性をネットワークとして表す手法はオーストラリアの白亜紀の恐竜に適用し、議論のあったオーストラリアの恐竜の類似性について、南半球の恐竜相に近いという結果が得られた。この成果はオーストラリアで開催された国際学会で発表すると共に、論文で発表した。
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