研究課題/領域番号 |
17K14412
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中川 麻悠子 東京工業大学, 地球生命研究所, 研究員 (20647664)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 培養実験 / 微生物 / 炭素同位体 / 硫黄同位体 / 温泉 / 湖 |
研究実績の概要 |
本研究では堆積記録中の残存化合物から“独立・従属栄養生物で構成される生態系”を読み取ることを目的とし、純粋培養実験による代謝生成物の炭素及び硫黄安定同位体分析、実環境にて分子生物学的計測による生物相と比較した安定同位体的指標を検証するための環境試料の採取を行った。 まず、純粋培養実験準備のための設備の立ち上げを行い、菌株の取得(化学合成独立栄養細菌7種、嫌気光合成細菌5種、酸素発生型光合成細菌1種)と培養を開始した。7種の化学合成独立栄養細菌に関して、単一の炭素源に変えた培地での大量培養が可能となり、バイオマス及び脂肪酸の炭素同位体比分析を完了した。分析を終えた微生物がもつ炭素固定回路、逆TCA回路について、生育温度・酵素の違いを比較できるデータセットを得ることができた。硫黄代謝菌1種に関して一定時間ごとの代謝物(硫酸塩・元素状硫黄・硫化物)を抽出し、各硫黄化合物に関する抽出効率及び分析精度の確認と培養試料の硫黄同位体比分析をほぼ終えた。 また、実環境試料に関して、研究協力者と共に東温泉・坂本温泉(鹿児島県)、中房温泉(長野県)涌池(長野県)、大沼湖(北海道)のバイオマット、土壌、水等を採取し、微生物相解析と溶存・懸濁態炭素同位体比分析を行い、炭素循環モデル構築に必要なデータを得ることができた。特に涌池における微生物相の季節変動から、夏季成層期間中3-5m深度での緑色及び紅色硫黄細菌、5m以深にて化学合成細菌が優占していることが示され、微好気環境と嫌気環境で優占する炭素固定回路の推測を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属機関にて培養設備構築の協力者いたため、予想より時間がかからずガスラインシステムなど完成した。培養に関して、一部十分なバイオマス量を得られない菌種があったが、まずは培養がうまくいった菌種に関して分析を進めた。研究協力者と複数の環境試料採取を速やかに行えたため、年度内に予定通りの分析を終えられた。分析試料数が多かったが、技術補佐員を雇用できたことで、作業の分担ができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に分析を終えた炭素源・硫黄源からの同位体分別について各微生物が持つ炭素代謝及び硫黄代謝に関する酵素の違いを元に考察を行う。他の培養条件での培養を進め、比較することで環境条件による同位体分別の変化に関する解析を進める。また、十分なバイオマス量を得られていない微生物について引き続き行う。 環境試料の炭素同位体比を用いて、微生物相から予想される炭素代謝を元に生物活動の寄与を推定するためのボックスモデル構築を進める。 これまで報告されている純粋培養での炭素及び硫黄代謝物のデータセットの蓄積を引き続き進め、利用しやすいシステムを考案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた分析装置(水の同位体分析)に不具合が生じ、それに伴う消耗品・出張費・の購入が次年度以降になった。また、微生物の培養や菌株管理に技術員を次年度以降も雇用する必要が生じたため、消耗品・備品購入へ予定していた予算を人件費へ変更する必要が生じた。
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